2009 Fiscal Year Annual Research Report
交流複素比熱測定で開拓する擬一次元分子性超伝導体のダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110516
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米澤 進吾 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (30523584)
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Keywords | 擬一次元超伝導 / (TMTSF)2ClO4 / 複素交流比熱 / 超伝導揺らぎ / 低速イナミクス / 不可逆過程 |
Research Abstract |
本研究課題では、「交流複素比熱」という低温固体物性分野ではほとんど用いられてこなかった物理量に着目し、その低温における測定技術を確立することと、それを用いて擬一次元導体TMTSF系の超伝導状態の謎を解明することを目指している。磁化率が交流複素量に拡張されるように、比熱もある状況下では周波数依存する複素量として扱うべき物理量である。この「交流複素比熱」はポリマー等で実際に測定されており、試料中の低速ダイナミクスや不可逆過程の解明に役立っている。 H21年度は擬一次元超伝導体(TMTSF)_2ClO_4の低周波極限の比熱(すなわち、通常の意味での比熱)を主に測定してきた。その結果、(TMTSF)_2ClO_4は超伝導ギャップにラインノードを持つスピン1重項超伝導体であることを明らかにした。また、熱力学的な超伝導相図と電気抵抗から得られた超伝導相図を比較し、低温高磁場の超伝導状態では電気抵抗には異常が見られるにもかかわらず通常の比熱には異常が見られないことが分かった。このことはエントロピーへの寄与のほとんどない特異な超伝導揺らぎが存在する可能性を示唆しており、交流複素比熱測定の重要性を裏付けるものである。 本課題で最終的に目指している比熱の周波数依存性に関しては、測定用の制御ソフトウェアを立ち上げた。そして測定を予備的に行ったところ測定系の改善が必要であることが分かった。本年度は必要な測定装置の整備を行った。来年度以降、通常の比熱測定と並行して周波数依存性測定を行っていく予定である。
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