2009 Fiscal Year Annual Research Report
軸策内逆行性輸送による神経細胞の可塑性制御
Publicly Offered Research
Project Area | Intracellular logistics: interdisciplinary approaches to pathophysiology of membrane traffic |
Project/Area Number |
21113514
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 俊英 Osaka University, 医学系研究科, 教授 (10301269)
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Keywords | 中枢神経 / 軸索 / 輸送 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、神経細胞の軸索内逆行性輸送と成体の神経回路の可塑性のクロストークを明らかにすることを目的とする。我々はこれまで、成熟動物の中枢神経が再生しない原因と考えられる軸索再生阻害因子としての機能をもつミエリンに発現する糖蛋白質MAGなどに注目し、それらの受容体を同定し、その細胞内シグナル伝達を明らかにした。さらに、培養DRGニューロンのコンパートメントカルチャーの系を用いて、MAGがp75受容体と複合体を形成し、軸索内に取り込まれ、軸索内を逆行性輸送されることを見いだした。MAG-p75の取り込まれた軸索局所においては、Rap1の活性化が認められた。Rap1の活性化は数時間後に細胞体においても認められ、細胞生存に働いていることが明らかになったが、これらの効果はp75ノックアウトマウスでは認められなかった。したがってMAG刺激によって軸索局所で形成されたシグナルが、軸索内逆行性輸送によって細胞体に運ばれることが示され、軸索内逆行性シグナル伝達は、軸索損傷時に重要な役割を演じていることが示唆される知見である。本研究においては、さらに「神経回路の可塑性」という現象に着目して、軸索内逆行性輸送の果たす役割を明らかにするための研究を進めている。培養条件下で神経細胞の軸索を切断すると、他の樹状突起が軸索となる現象が極性の再獲得として報告されている。我々は、ラット胎児の海馬神経細胞の培養を行い、極性獲得後に軸索を切断し、タイムラプス顕微鏡で観察したところ、切断数時間後に細胞体から新たな突起が生じる現象(軸索新生)を認めた。この現象はin vivoで認められる神経回路の可塑性現象を、一部反映するモデルと考えられる。この軸索新生は、dyneinおよびdynactinの働きを必要としており、軸索内逆行性輸送により、損傷によって形成された何らかのシグナルが細胞体まで運ばれることが示唆された。
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Research Products
(2 results)