2010 Fiscal Year Annual Research Report
RNAポリメラーゼIIによる転写の時空間場
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
21114512
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 宏 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30241392)
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Keywords | RNAポリメラーゼ / 転写制御 / 生細胞観察 / 細胞核構造 / リン酸化 / 遺伝子発現 / クロマチン / ヒストン |
Research Abstract |
転写は、遺伝情報発現の出発点であり、その制御機能の解明は、遺伝子の発現制御を理解するうえで非常に重要である。しかし、真核生物の細胞核内における転写の場が、どのように制御され、構築されるのかについての基本的問題は解明されていない。遺伝子の転写を行う酵素であるRNAポリメラーゼIIの最大サブユニットC末端に存在する繰り返しドメインには複数のリン酸化部位があり、転写開始の際にSer5が、転写伸長の際にはSer2がリン酸化される。昨年度の研究で、これらのリン酸化Serを特異的に認識するモノクローナル抗体の作製を行い、転写開始前複合体、開始複合体、伸長複合体中のRNAポリメラーゼIIを生きた細胞で可視化することに成功した。そこで、転写を活性化した際のRNAポリメラーゼIIの動態を明らかにするために、グルココルチコイドで転写誘導されるMMTV-LTR(mouse mammary tumor virus long terminal repeat)を約200コピー持つ遺伝子アレイを持ち、GFP-GR(GFP融合グルココルチコイド受容体)を発現する細胞を用いた。この細胞にグルココルチコイドを添加すると10分程度でGFP-RがMMTVアレイ上に集積する。そこで、Cy3やCy5で標識したリン酸化特異的Fabを導入し、アレイ上へのGFP-GRと蛍光標識Fabの集積速度を生細胞で測定した。その結果、転写因子であるGFP-GRの集積とRNAポリメラーゼIIの集積には数分のタイムラグがあるが、RNAポリメラーゼIIが集積してからは速やかに転写開始(Ser5リン酸化)と転写伸長(Ser2リン酸化)が起こることが明らかになった。従って、GR依存的な転写誘導においては、RNAポリメラーゼIIのリクルートがリミッティングステップであると考えられた。
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