2009 Fiscal Year Annual Research Report
機能性クロマチンモデルとしての人工遺伝子制御システムによる遺伝子転写調節概念
Publicly Offered Research
Project Area | The physicochemical field for genetic activities |
Project/Area Number |
21114517
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 佳樹 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 教授 (70284528)
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Keywords | クロマチン / 転写制御 / ヒストンコード / 遺伝子送達 / プロテインキナーゼ / ヒストン / 遺伝子キャリヤー / ブラウン運動 |
Research Abstract |
平成21年度は、独自に開発した遺伝子の人工制御システムを用いて、遺伝子人工転写制御を支配する因子の解明と、クロマチンの機能のモデル化を試みた。まず、遺伝子(プラスミド)を蛍光標識し、その蛍光偏光解消を評価したところ、プロテインキナーゼによるリン酸化で遺伝子転写を活性できるポリカチオンである遺伝子制御剤と複合体を形成した場合に、DNAの運動が妨げられ、その運動性は標的キナーゼによるリン酸化で回復すること、キナーゼによりリン酸化を受ける基質部分は、遺伝子と複合体を形成すると運動が激しくなることを見出し、転写制御に分子の分動性が重要であることを見出した。また、遺伝子制御剤の側鎖ペプチドにピストンH3のアミノ末端テイル配列を用いた制御剤を合成し、その転写制御を検討したところ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼによるアセチル化で、総カチオン荷電はほとんど変化しないにもかかわらず、PCR効率、及び転写効率が回復することを見出した。このことは、実際のクロマチンにおけるヒストンテイルが、DNAの運動性の抑制と開放の相転移点をアセチル化、脱アセチル化により往復できる配列であることを示すものであり、興味深い。また、この複合体は、ポリメラーゼの他、制限酵素などのDNA鎖をスライドする酵素のアクセスは抑制するが、1点で作用するヌクレアーゼなどのアクセスは抑制しないといった興味深い挙動をとることを明らかにした。また、この複合体は、実際のクロマチンに比べ、DNAの凝縮能は弱いにも関わらず遺伝子転写を効率良く抑え、従来信じられているDNAの凝縮が転写抑制の本質ではないことを示唆していた。すなわち、凝縮による転写抑制の本質は、DNA鎖の運動の抑制にあり、たとえ凝縮が弱くとも、運動性を抑制できれば、転写は抑えられることを初めて示したものといえる。
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