2009 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の匂いに対する多様な情動を制御する神経回路の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Systems molecular ethology to understand the operating principle of the nervous system |
Project/Area Number |
21115505
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
小早川 高 Osaka Bioscience Institute, 神経機能学部門, 研究員 (60466802)
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Keywords | 神経回路の改変 / 匂い分子 / 嗅覚受容体 / 情動の制御 / 行動の制御 |
Research Abstract |
特定の嗅覚神経回路を部分的に除去した「神経回路の改変マウス」を用いた行動実験によって、背側の嗅覚神経回路が天敵の匂いに対する先天的な恐怖行動や、同種動物の匂いに対する様々な社会コミュニケーション行動を制御していることを既に明らかにしていた。既知の天敵の分泌物由来の恐怖行動を誘発する匂い分子(TMT)と、同じく既知の攻撃行動や性行動を誘発する匂い分子(SBT,DHB)が活性化する糸球を解析した結果、嗅球の特定の位置に隣接して局在する糸球クラスターが、恐怖と社会コミュニケーション行動をそれぞれ制御している可能性が明らかになった。 ここで明らかになった、恐怖反応を誘発する可能性のある嗅覚神経回路を効率的に活性化する人工物由来の匂い分子をスクリーニングした。その結果、これまでに知られていたキツネの分泌物由来の匂い分子であるTMTに比較して、最大で10倍の頻度ですくみ行動を誘発する人工物由来の匂い分子群を同定した。これら強力な恐怖行動を誘発する匂い分子をリード化合物として、匂い分子の化学構造と恐怖行動との相関関係の解析を行った。その結果、恐怖行動の誘発において鍵となる化学構造の骨格、置換基の位置や種類の候補を複数得た。また、この解析を通して様々な頻度ですくみ行動を誘発する一群の匂い分子セットを得た。様々な頻度で恐怖行動を誘発する匂い分子を用いることで、恐怖行動の定量的な制御に関与する嗅覚受容体や、嗅覚神経回路を同定する実験を進める。社会行動の誘発に関与するSBTやD班1の化学合成の手法を改良し、関連化合物を合成する方法をほぼ確立した。 恐怖行動や社会行動に関与する匂い分子に対する嗅覚受容体を同定するために、培養細胞を用いた再構成系で嗅覚受容体のスクリーニングを行う準備を進め、また、特定の嗅覚受容体を発現する嗅細胞を特異的に除去した神経回路の改変マウスを作製し繁殖を行った。
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