2010 Fiscal Year Annual Research Report
MAPKリン酸化シグナルのイメージングによる線虫の環境応答行動の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Systems molecular ethology to understand the operating principle of the nervous system |
Project/Area Number |
21115507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 太一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70396886)
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Keywords | ストレス / キナーゼ / イメージング |
Research Abstract |
動物が環境変化を察知し、その情報を処理し、適応するという一連の環境応答の過程において、MAPK分子は中心的な役割を担うことが遺伝学的、生化学的に明らかにされてきている。しかしその一方で、生きた動物体内のMAPK活性化動態は未解明であった。そこで本研究では環境応答行動を示すモデル生物の線虫を用いて、昨年度までに味覚神経のMAPK活性をイメージングすることに世界で初めて成功していた。本年度はこの系を用いて、MAPK活性を制御する上流経路の特定とその活性化の特性を解析した。まず、サイクリックヌクレオチド依存性チャネルが抑制された変異株(TAX-4株)を用いて感覚刺激に依存したMAPK活性化を検討した。その結果、野生株で観察されたMAPK活性化がこの変異株では抑制されていることがわかった。この変異株では神経興奮を起こす各チャネル活性が抑制されるため、神経興奮とMAPK活性との関連が示唆された。そこで、神経活動のマーカーであるカルシウムシグナルとの時間的関連を調べた結果、MAPKは神経興奮とほぼ同期して活性が上昇していた。イメージングの定量性の良さを生かし、刺激の「持続時間や頻度」とMAPK活性との対応を定量解析した。すると、MAPK活性は神経興奮に依存しながらも、予想外に、一過的な神経興奮だけでは弱いキナーゼ活性しか誘導されず、むしろ、持続的な刺激や高頻度の繰り返し刺激によって強い活性化を生じるという特異的な制御を受けていることが明らかになった。神経興奮の持続時間や頻度は記憶形成や学習行動の鍵となるファクターであるが、学習過程において、一過的な神経興奮の「頻度」の情報を持続的な「神経機能の変化」へと変換する分子的機序は未解明である。本研究結果からこの変換過程にMAPK分子が関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)