2010 Fiscal Year Annual Research Report
生得的および経験的な食嗜好の形成・個体行動・神経・分子の視点から
Publicly Offered Research
Project Area | Systems molecular ethology to understand the operating principle of the nervous system |
Project/Area Number |
21115511
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
尾崎 まみこ 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00314302)
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Keywords | ハエ / 食嗜好 / 味覚 / 嗅覚 / 経験 / 生得性 / 神経機構 / 神経回路 |
Research Abstract |
ヒトを含む動物行動の多くは、生息空間、配偶者、食物などに関する"嗜好"に左右される。そこで本研究では、クロキンバエをモデルとして食嗜好性に焦点を当て、嗜好が正・負に分かれる時、また嗜好性が経験を経て変化する時の、摂食行動の切り替えに関わる神経システムの機能性を明らかにする目的で実験を実施した。 食事時に共存すると食欲が上がり、経験によって増強された食欲レベルが維持される匂い物質として1-octen-3-olを特定した。一方、共存すると食欲が下がり、経験によって減退した食欲レベルが維持される匂い物質としてD-limoneneを特定した。D-limoneneの効果は、主嗅覚器官(触角)から入力したときに発揮されることがわかってきた。食欲増進を促す1-octen-3-olの匂い情報を運ぶマキシラリパルプからの神経束は、予想されていた触角葉(嗅覚一次中枢)へ延びる経路のほかに、味覚一次中枢と言われてきた食堂か神経節に終末する経路があることが分かった。この終末領域は、味覚神経が終末する領域に非常に近接しており、この部域で、摂食行動を動機づける味覚情報と、食欲増進を促す嗅覚情報が統合される可能性が考えられた。 また、嗅覚器と味覚器は左右対称に分布しているが、食欲調節をめぐる味覚と嗅覚の情報統合には、左右の偏側性があることが分かった。 予定外の実験として、キイロショウジョウバエで見出された新規ペプチドを、クロキンバエに注射して、食欲の変化が有意に起きることを明らかにした。
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