Research Abstract |
群体ホヤは無性生殖で増殖する。ミダレキクイタボヤという群体ホヤでは,無性生殖により生まれた個体の寿命は2週間程度である。有性生殖期の個体では生殖腺が発達し,配偶子が形成される。本研究ではミダレキクイタボヤをモデルとして,配偶子幹細胞(GSC)の維持と分化のメカニズムおよびGSCの制御に関わる幹細胞ニッチの分子的実体を明かにする。まず,GSC制御および配偶子分化に関わる遺伝子群解析に必要な基盤情報を得るために,ノーマライズドcDNAライブラリを構築し,次世代シーケンサー(GS-FLXシステム)を用いてミダレキクイタボヤ5'EST解析を行った。その結果,およそ33000種のcontigが得られ,各コンティグについてNCBI BLASTを使ってアノテーションを付加した。これらを統合し,塩基配列およびアノテーションデータに対するBLASTおよびキーワード検索機能を装備したESTビューワを作成した。次に,GSCからの配偶子分化を制御するメカニズムとしてBMPシグナル経路に注目し,BMPをはじめ,シグナル経路を構成する分子をコードする遺伝子の探索とクローニングを行った。その結果,新たに,BMP関連遺伝子を3種,TGF-betaI型レセプターを2種,Smad遺伝子を2種同定した。引き続き,これらの発現解析を進める。GSCから生殖前駆細胞が分化する際,Vasaの転写が活性化される。これを調節する分子メカニズムを明らかにするために,ゲノムからVasaの上流配列をクローニングし,レポーター遺伝子を作製した。生殖系列細胞を含むミダレキクイタボヤ間充織細胞にin vivoリポフェクション法を用いて,レポーター遺伝子を導入した。その結果,卵母細胞で,レポーターの活性が検出された。これにより転写開始点から上流1542bpの領域に,卵母細胞でのVasaの転写活性化に必要なシスエレメントが存在することが示唆された。生殖前駆細胞でのVasaの転写活性化に必要な領域を同定するため,さらなるレポーター解析を行う。
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