2009 Fiscal Year Annual Research Report
ASK1キナーゼによる生理的な活性酸素シグナルの受容-応答分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
21117507
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松沢 厚 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (80345256)
|
Keywords | 活性酸素 / ASK1 / シグナル伝達 / キナーゼ / センサー分子 / 脱ユビキチン化酵素 / ユビキチン化 / リン酸化 |
Research Abstract |
本研究は、活性酸素の重要なエフェクター分子ASK1キナーゼのシグナル複合体構成因子が、微妙な活性酸素の濃度を感知し、その濃度に応じた生理応答シグナルに変換するための「生理的な活性酸素シグナルの受容応答機構」を分子レベルで解明することを目的とする。そのためにASK1シグナル複合体の新規構成因子を網羅的に同定し、その機能解析を行うことで、活性酸素シグナルとリン酸化・ユビキチン化シグナルとの変換・連携の仕組みと、その多様な生理的意義および疾患との関連性に迫りたい。今回、ASK1分子のpull-down法を用いて、活性酸素依存的にASK1と結合する脱ユビキチン化酵素USP9Xを同定し、その機能解析を行った。その結果、ASK1は活性化依存的にユビキチン化分解されること、またUSP9XはASK1を脱ユビキチン化することでその分解を抑制できることが明らかとなった。USP9XとASK1との結合には、ASK1の分子内に存在する特徴的なアミノ酸配列(LRLRGG配列)が必要で、興味深いことに、この配列はUSP9Xの基質であるユビキチンの分子内に存在するものと同じであった。さらに、USP9X欠損細胞では、ASK1依存的な活性酸素誘導性の細胞死が抑制されることが分かり、本研究結果は、心筋梗塞や脳梗塞といった虚血性の疾患など、活性酸素を介した細胞死によって引き起こされる様々な疾患の原因の解明や、USP9X阻害剤などを用いた治療法の開発に応用できると考えられる。さらに、その他の新規ASK1シグナル複合体構成因子として抗酸化蛋白質の一つを同定し、現在、活性酸素センサー分子としての機能と、ASK1の活性化機構における生理的役割について解析を行っている。また、USP9Xの機能に拮抗するASK1ユビキチン化酵素を網羅的に同定できるスクリーニング系の構築を完了し、実際にそのスクリーニングを進めている。
|