Research Abstract |
水和量を減少させたときにATP依存的なアクトミオシン運動の停止機構を詳細に調べるために,ショ糖を添加したときにATP依存的なアクトミオシン反応の素過程で何が起きているかをストップドフロー装置による速度論的解析を行った。ATP加水分解にともなうミオシンのアクチン運動に関わる素過程は,(1)アクトミオシンからのADP解離反応と(2)ATP結合によるアクトミオシン解離反応の2つの反応から成り立っている ショ糖濃度が0M,1.5M,2.0Mのとき,アクトミオシンからのADP解離速度定数k_<-AD>はそれぞれ148,149,71s^<-1>であった。この結果は,ショ糖がアクトミオシンからのADP解離速度に及ぼす影響はごくわずかであることを示している。ATPによるアクトミオシンの解離反応はκ_1,k_<+2>で定義される2段階反応,反応によって進む(反応2)。最初の反応の平衡定数K_1はアクトミオシンとATPとの結合反応における定数であり,これはATPの濃度に依存する,つまり拡散が効いてくる反応である。ショ糖濃度が0,1.5M,2.0MのときのK_1の値はそれぞれ5.6×10^<-6>,3.4×10^<-6>,2.9×10^<-6>M^<-1>であった。2.0Mのショ糖のときはショ糖がないときに比べて約半分になっていることを示す。これは溶液粘性の上昇による拡散の減少によると考えられる。飽和ATP濃度のときのATPによるアクトミオシンの解離速度定数はk_<+2>(ATPによるアクトミオシンの異性化反応)と等しい。k_<+2>はショ糖濃度が0,1.5 M,2.0Mのときそれぞれ,418,145,54s^<-1>であった。つまり,k_<+2>はショ糖濃度に異存して,1/3,1/8と減少した。これは水和量を減少させたときにATPによるミオシンの異性化によるアクチンからの解離反応が阻害されたことを示唆している。
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