2009 Fiscal Year Annual Research Report
等温滴定熱量測定法によるATP/ADP変換反応の熱力学的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
21118506
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
城所 俊一 Nagaoka University of Technology, 工学部, 准教授 (80195320)
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Keywords | 高エネルギーリン酸結合 / 加水分解酵素 / 反応エンタルピー / 溶媒和 / 熱測定 / イオン化エンタルピー / 水素イオン |
Research Abstract |
ATPは生物共通の「エネルギー通貨」といわれ、加水分解時の自由エネルギー変化が、数多くの生化学反応に用いられている。しかし、その自由エネルギーを生み出す分子論的な機構はまだ解明されておらず、また、pH・温度・溶媒組成などによって自由エネルギーは大きく変化するため、実際の生化学反応でATPの加水分解の自由エネルギーがどれだけであるかについても不明な場合が多い。本研究では、本年度は、等温滴定型熱量測定(ITC)を用いて、様々な溶媒条件において、ATPの加水分解エンタルピーと、加水分解に伴う水素イオンの出入りを実測できることを示した。すなわち、イオン化エンタルピーの異なる4種類の緩衝液中でアクトミオシンによるATPの加水分解エンタルピーを実測し、これらの値と緩衝液のイオン化エンタルピーとの直線関係から、緩衝液のイオン化エンタルピーを補正した加水分解エンタルピーと水素イオン解離数を決めた。緩衝液のイオン化エンタルピーも同じ溶媒条件下でITCを用いて実測可能であり、文献データのない様々な溶媒条件での反応エンタルピーの測定を可能とした。また、ITCにより、アクトミオシンの加水分解反応の時間経過を測定し、反応が大きく2段階で進行すること、後半の反応は、単純なミカエリス・メンテン式に従うことを明らかにした。アクトミオシンを用いたADPと無機リン酸からATPへの逆反応の可能性を検討した結果、混入した酵素によると考えられるADPの加水分解反応が観測され、この反応を観測するためにはより適した酵素系を用いるなど、他の評価系を検討する必要があることがわかった。
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