2009 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポーターにおけるATP駆動力共役メカニズムの立体構造基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
21118509
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 Kyoto University, 薬学研究科, 教授 (90204487)
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Keywords | 生理学 / 膜蛋白質 / X線解析 / 結晶構造 / 薬物輸送 |
Research Abstract |
癌の多剤耐性の原因となるABCトランスポーターP糖タンパク質の特徴的な構造部位である「リンカー領域」がATP加水分解エネルギー共役の調節機能を担っていることを解明した。まず、高度に精製したP糖タンパク質を限定加水分解することによって、このリンカーを切断したP糖タンパク質を調製した。次いで、その「リンカーを切断したP糖タンパク質」の構造的性質をゲル濾過クロマトグラフィーによって解析するとともに、リンカー切断がATP加水分解活性の熱安定性に影響するかどうかを調べた。その結果、リンカーの切断は、P糖タンパク質全体の構造や熱安定性に影響がないことが判明した。さらに、基質依存性、基質特異性、基質と共役しない条件、それぞれに関してATPase活性を測定したところ、リンカーは、ATP加水分解の駆動力を効率的に基質輸送に共役させるための装置であることが明らかとなった。 ABCトランスポーターの立体構造解析を達成するため、大腸菌由来MsbAのC末端に存在する2つのαヘリックスを欠失させた変異型MsbAをタンパク質工学的に作成した。その結果得られた変異型MsbAは、野生型と良く似たATPase活性を示すことが判明した。そこで、ATPのアナログAMP-PNPとの複合体について結晶化を行ったところ、4.5A分解能を超える結晶を調製することに成功した。この結晶は、野生型と同様の空間群P1を示したが、結晶格子内部でのタンパク質分子間相互作用様式が変化しており、AMP-PNP結合に伴い、inward-facing型からoutward-facing型コンフォーメーションへと立体構造が大きく変化していることが示唆された。
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Research Products
(6 results)