2009 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱によるF-アクチン周辺水分子のダイナミクスの直接測定
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
21118521
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤原 悟 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10354888)
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Keywords | アクチン / 中性子散乱 / 中性子準弾性散乱 / 水和 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究は、蛋白質の機能発現に重要な役割を果たすピコ秒・オングストロームスケールの蛋白質や周辺水分子の熱揺動―ダイナミクスーの直接測定が可能な中性子非弾性散乱を用いて、ATP駆動蛋白質F-アクチンについて、蛋白質自体並びに周辺の水分子のダイナミクスの直接測定を行い、周辺水分子のダイナミクスがアクチン分子のダイナミクスに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。平成21年度は、まず、構造状態の異なるアクチン(アクチン分子が繊維状に重合したF-アクチン及び単量体状態のG-アクチン)について、それぞれの中性子準弾性散乱(QENS)スペクトルを解析し、蛋白質分子内ダイナミクスの特徴づけを行った。特に蛋白質分子内ダイナミクスに及ぼす水和水の効果を調べた結果、水和の効果が、F-アクチンとG-アクチンで異なっていることが明らかとなった。さらに、アクチン周辺水分子のダイナミクスを抽出するために、F-アクチン及びG-アクチンそれぞれについて、H_2OあるいはD_2Oで水和した試料のQENSスペクトルの解析を行った。その結果、H_2O水和試料とD_2O水和試料のQENSスペクトルを適当にスケーリングした後、スペクトルの差をとることにより、水分子のQENSスペクトルの抽出が可能であることを示し、水和水ダイナミクス解析の方法論を確立した。また、F-アクチン水和水の運動は、G-アクチン水和水の運動よりも遅いことが明らかとなった。これは、試料中に含まれるK^+及びC^<1->イオンの髄がF-アクチンとG-アクチンで大きく異なっている(F-アクチン>G-アクチン)ためであると推察される。
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