2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己顔認知のfMRI研究―身体性・非社会性・ミラーシステム
Publicly Offered Research
Project Area | Clarification of the mechanism of face recognition by interdisciplinary research |
Project/Area Number |
21119504
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉浦 元亮 Tohoku University, 加齢医学研究所, 准教授 (60396546)
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Keywords | 脳機能イメージング / fMRI / 脳機能マッピング / 自己顔認知 / 自己認知 / 顔認知 / 上側頭溝後部 / 社会的情報処理 |
Research Abstract |
自己顔認知の神経基盤を、脳活動測定と行動実験を用いて解明する全体計画である。平成21年度は「顔認知時に上側頭溝後部が自己顔特異的に無活動を示す」という現象の原因追求をテーマとした。上側頭溝後部は表情や視線の認知に重要な役割を果たすことから、社会的信号の処理に関わると考えられてきた。この考え方に基づき、この領域の無活動の原因として、自己顔に対して不必要な社会的信号の処理を抑制を、当初の作業仮説として想定した。これを検証するために、約20名の健常若年被験者に自己顔及び他者顔刺激を提示し、社会的情報処理(視線・表情認知)課題を行わせた。ところが、想定された自己顔に対する課題パフォーマンス低下(反応時間遅延)は認められなかった。さらに、別の約15名の健常若年被験者を用いて、視線の移動による空間注意促進の程度を、改変ポスナーパラダイムを用いて、自己顔と他者顔間で比較した。しかしやはり、視線移動方向の影響は自己他者間で差がなかった。一方、この実験では自己顔提示に伴う反応時間遅延が主効果(視線移動方向の影響との相互作用なし)として認められた。さらに、約30名の健常若年被験者を対象に、機能的MRIを用いて社会的信号の検出に関わる脳領域を再検討したところ、上側頭溝後部を単純に社会的信号の処理に関わると見なすことに対して、否定的な結果が得られた。上側頭溝後部は視線の方向変化の検出に際して賦活したが、幾何学図形の生物学的な動きには反応せず、両者に共通して反応する領域は中側頭回後部に認められた。また、これらの領域の活動は課題の明示的・非明示的の差に影響された。これらの知見から、自己顔認知が何らかの意味での処理抑制メカニズムを作動させていることは検証された。しかし、その社会的情報処理との関係については、上側頭溝後部の機能解剖の再解釈とあわせて検討する必要があることが明らかとなった。
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