2010 Fiscal Year Annual Research Report
顔の記憶における前頭前野の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Clarification of the mechanism of face recognition by interdisciplinary research |
Project/Area Number |
21119513
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
辻本 悟史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20539241)
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Keywords | 顔 / 再認記憶 / MEG / 脳磁図 / 社会認知 |
Research Abstract |
社会生活における顔の重要性には、職業や年齢、地位などその人物に関連する社会的情報を象徴するという点がある。本研究では、人物に関する社会的情報の有無によって、その人物の顔画像を見たときの脳活動が如何に影響されるかを調べた。本年度は、14名の健常成人を被験者とし、306チャンネルのMEG装置を用いて神経活動を記録・解析した。行動課題は、顔の再認記憶課題であり、EncodingとResponseの2つのphaseで構成された。Encoding phaseでは、12名の未知の人物の顔写真が様々な角度で、連続して呈示された。ただし、実験条件では、趣味や職業など人物にまつわる情報が文字によって先行呈示され、統制条件では、無意味な記号が呈示された。Response phaseでは、再び12名の顔写真が連続して呈示され、参加者は見たことのある顔か否かをボタン押しによって報告した。この繰り返しにより、それぞれの被験者が、合計144名の顔写真を記憶・再認した。 行動レベルで、実験条件における再認成績は統制条件より有意に高かった。MEGデータでは、後頭側頭皮質上のセンサーで、顔写真呈示後100-200msの間に一過性の応答が見られ、それに続いて緩やかな変化が観察された。この後期成分を詳しく調べるために、刺激呈示後200-400msの期間の波形の曲線下面積(AUC)を求めた。それによると、統制条件よりも実験条件でAUC値が有意に大きかった。短潜時成分は、条件間に有意な差はなかった。反応の潜時や内容から、本研究で観察された後期成分は、高次の領野からのトップダウン信号の影響を受けていると考えられる。こうした神経メカニズムが、単なる視覚情報ではなく、社会的情報を含んだ「顔」としての認知、記憶に関与しているものと考えられる。
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