2021 Fiscal Year Annual Research Report
若い恒星まわりの系外惑星探査:新解析手法の確立とトランジット惑星観測
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00035
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
平野 照幸 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 助教 (10727449)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 系外惑星 / 散開星団 / トランジット惑星 / 近赤外分光 / 視線速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,将来的な若い恒星まわりの太陽系外惑星の大規模な探査を念頭に置いて,(1) 若い恒星に見られる視線速度ジッター(恒星活動による見かけ上の視線速度変化)の評価と抑制法の開発,(2) すでに見つかっている若いトランジット惑星の軌道・大気等の特徴付け,という2つのテーマに取り組んでいる。(1)のテーマでは,視線速度ジッターの理論モデル計算を実施するとともに,実際にすばる望遠鏡の近赤外分光器IRDを用いていくつかの若い惑星系(K2-25,K2-33等)を観測することで近赤外域での若い恒星の視線速度ジッターの振る舞いを詳細に調査した。その結果,「視線速度ジッターには強い波長依存性があること(従来の予想に反して長波長側で視線速度ジッターが大きいこと)」,「磁場によるスペクトル線のゼーマン効果が場合によって大きな視線速度ジッターになりうること」などを新たに突き止めた。 (2)のテーマに関しては,2021年度はHIP67522など新たに発見された若い系外惑星系の近赤外トランジット分光観測を実施するとともに,V1298 Tauなど以前IRDによるトランジット分光観測を実施していた惑星系のデータの解析を進めた。IRDデータの解析をもとにロシター効果による軌道傾斜角の測定し,V1298 Tau系は星の自転軸と惑星(複数存在)の公転軸がほぼ揃っていることを確認した。同じトランジット分光データを用いることで,透過光分光法により惑星ヘリウム大気の制限を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究は進められており,観測についても概ね希望するデータは取得された。2022年度も同様のペースで研究をすすめることで,各テーマの研究目的を達成できる目処が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,上記研究テーマ(1), (2)を遂行する。(1)のテーマについては,2021年度の研究でM型矮星などのスペクトル中に分子線が非常に豊富に存在するケースでは,視線速度ジッターの原因となる黒点等の温度に依存してジッターのパターン(特に視線速度変動振幅)が大きく異なる可能性が示唆された。2022年度はこれをさらに追求し,理論計算と実際の観測データの解析によって黒点とそれ以外の光球面の温度によってどのような違いが生じるかを精査する。さらに,これらの情報をもとに,視線速度ジッターを除いて真の惑星シグナルを取り出す方法論を構築する。 一方,テーマ(2)についてはこれまでの観測で得られたデータ(特にHIP67522のトランジット分光のデータ)の解析を進め,できるだけ早く結果を学術論文としてまとめる。
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