2021 Fiscal Year Annual Research Report
隕石から探る木星型惑星大移動説:模擬実験による有機物指標の確立
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00036
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
癸生川 陽子 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70725374)
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Project Period (FY) |
2021-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 小天体 / 隕石 / 太陽系有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系の惑星が形成されてから数億年の間に,木星や土星などの巨大ガス惑星の軌道が大きく変わったという説が理論研究から提唱されている。それに伴い,太陽系外縁部の小天体の軌道が散乱され,現在のメインベルト小惑星の軌道付近まで引き込まれた可能性が指摘されている。そこで地球外物質の母天体の集積位置の指標を確立するため,原始惑星系円盤内の動径方向における各位置で推定される出発物質をもとにした有機物の合成実験を行う。各領域で集積した物質が小天体内部での水質変質といったプロセスを経てどのような最終形態になるかを検証し,天体の集積位置の指標を確立する。そして,捕獲岩やその他の地球外物質中の有機物の特徴から,これらの母天体の集積位置を制約する。 合成実験は,Kebukawa et al. (2013 ApJ)の手法をもとに,(1) H2OスノーラインとNH3スノーラインの間(3-5 AU),(2) NH3スノーライン以遠,の各領域で想定される出発物質を用いる。それぞれ,水,ホルムアルデヒド,グリコールアルデヒド,アモルファスシリケイト(Mg2SiO4)を基本とし,窒素源として(1)ではヘキサメチレンテトラミン,(2)ではアンモニアを加える。本年度は,NH3スノーライン以遠を想定し,アンモニアを含む出発物質を用い,隕石などに含まれる複雑高分子有機物の合成実験を行った。また,出発物質の組成の違いによる生成物の違いを確認するため,アンモニア以外の組成を変化させた実験も行った。実験生成物は赤外分光及び走査型透過X線顕微鏡(STXM)により有機物の官能基構造を調べ,それぞれの出発物質から形成される有機物の特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り,1年目に行う実験をおおむね終了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,H2OスノーラインとNH3スノーラインの間を想定し,窒素源としてヘキサメチレンテトラミンを用いた実験を行う。以上より,H2OスノーラインとNH3スノーラインの間,及び,NH3スノーライン以遠で集積した後,水質変質を受けて形成された有機物の分子構造の特徴を明らかにし,有機物の分子構造の特徴から天体の集積位置を推定する指標を確立する。そして,現在の地球外物質中の有機物の特徴から,そのもととなった物質,ひいては,その有機物を含む天体の集積位置の制約を行う。
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