2021 Fiscal Year Annual Research Report
High resolution measurement and analysis of spectral lines of interstellar molecule, methyl formate in the vibrational excited states
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00038
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小林 かおり 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80397166)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 星間分子 / 分子分光学 / 電波天文学 / マイクロ波分光 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な有機分子(Complex Organic Molecules: COMs)は電波干渉計の高性能化により観測が容易になった。これにより新しい分子種の発見が相次ぐとともに、比較的弱い多数の遷移が観測されるようになった。これらのラインの由来となる分子、その温度や量を求めるためには実験室における分光測定データが標準として必要であるが現状は全く十分でない。これらの分光データによって分子の存在、物理量、温度等を解明するだけでなく、今後の観測が期待されるアミノ酸のようなより複雑な生体分子のスペクトル線と見分けることができる。そのため、実験室分光データを充実させることは喫緊の課題である。本研究で引き続き着目しているギ酸メチルはメタノールと比べて回転定数が小さいため、スペクトルの密度が大きい。既に星間空間においても1000本以上もスペクトル線が同定されているが、実験室分光においても未解明の遷移が多数あり、今後、高い振動励起状態にある回転遷移の観測が期待できる。 周波数変調型マイクロ波分光計を用いて325-360 GHz帯の測定を実施した。これにより1万本以上のスペクトル線が観測された。これらの遷移の帰属を進めるとともに、遠赤外分光データとマイクロ波分光データの同時解析を実施した。今後の星間空間における振動励起状態のギ酸メチルの同定に向けて、新たに実験室分光で新たに測定したデータの解析結果も組み込める電波天文学データの解析ソフトMADCUBAというソフトウェアを導入した。テストケースとしてALMAのOrionの公開データを用いて、ギ酸メチルの基底状態の同定・解析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周波数変調型マイクロ波分光計によるギ酸メチルの測定も進められ、帰属を拡張することができた。遠赤外分光データとマイクロ波分光データの同時解析を実施した。一方で、チャープパルス・フーリエ変換型マイクロ波分光計では、積算回数がかなり必要であるため、想定より時間がかかっているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
ギ酸メチルはメチル基の振動に由来する内部回転と純回転のエネルギーのオーダーが近く、振動励起状態にも室温で分布するため、非常に多数の遷移が測定されることが特徴である。内部回転の影響で分子定数を用いたスペクトル線の外挿性が低くなるため静止周波数は実測することが重要である。このような性質をもつギ酸メチルの振動励起状態および高い回転状態の帰属および解析のために主に次の3点を実施する。 1.振動励起状態の候補となる遷移について温度依存性の測定を行い、帰属の助けとする。 2.高分解能遠赤外振動回転スペクトルのマイクロ波分光の回転スペクトルの相互相関およびcombination differences法を利用して振動励起状態であるν17の解析を推進する。 3.ソフトMADCUBAを用いて、帰属できた振動励起状態や高い回転状態のギ酸メチルの静止周波数を電波干渉計ALMAによって得られている既存のデータと照合し、検出を目指す。 得られたデータは論文発表後に化学・分光学・天文学など多岐にわたるコミュニティーに還元するために代表者が構築したマイクロ波分光データベースToyaMAに継続的に蓄積する。
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Research Products
(5 results)