2021 Fiscal Year Annual Research Report
電波観測で探る金属量が星間物質の進化に及ぼす影響
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00040
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福井 康雄 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (30135298)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 星間物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年からパンデミックの影響でチリ現地に渡航ができず、望遠鏡を運用し観測データを取得することができなかった。そのためアーカイブデータを用いた研究と理論的研究を進める方針とし、観測の実行は延期した。 まず、金属量が銀河系の1/3-1/5程度と少ない大マゼラン雲(LMC)において、ダスト放射と中性水素(HI)放射の強度を比較し、両者の相関を調べた。これまでにHIガスの衝突による分子雲形成と星形成の誘発が指摘されていたが、衝突しているHIガスは、より低金属量(銀河系の1/10程度)の小マゼラン雲(SMC)起源の可能性がある。これが正しいなら、衝突している領域で、HIに対するダスト量の比は小さくなるはずである。前景にある銀河系起源のガス・ダストは除外して調べる必要があるが、その手法を確立し、LMC内でのガス/ダスト比の分布を得ることができた。その結果、予想通りHIガス衝突領域では有意にダストの量が減っており、SMCからの星間物質の流入が示された。また同領域において、軟X線の広がった放射が得られており、その起源についても議論した。およそ100 km/s程度でLMCの銀河面にHIガスが衝突した場合、強い衝撃波加熱が起こり、電離した高温プラズマが発生すると考えて矛盾がないという結果を得た。ドイツのグループと共同で、論文を出版した。 次に銀河系の円盤にハローから落下するHI雲について、理論的研究を進めた。これにより、以前に申請者のグループが発見した中間速度雲と呼ばれるHI雲の、形態・速度的特徴が、雲の落下モデルで説明できることを示した。中間速度雲は、銀河系ハローにある低金属量のガスが円盤に落下、周囲のガスと相互作用することで減速し、また高金属量のガスと混合されると解釈できる。アメリカのグループと共同で論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、世界的なパンデミックの影響で、2021年度は全く海外渡航することができなかった。利用する予定であったNANTEN2望遠鏡はチリのアタカマ砂漠にある。観測自体はリモートで実行可能であるが、運用メンバーが現地で発電機を起動し、維持管理する必要がある。2020年3月に運用メンバーは緊急帰国しており、望遠鏡も停止状態のまま、状況の改善を待つしかなかった。 しかしこの間、アーカイブデータを用いた研究を進め、今後の方針の変更についての検討を進めた。中間速度HI雲の研究については、銀河系の円盤にハローから落下する雲であるとのモデルを提案することができ、さらに全天の雲に対して同様の解析を適用することを始めた。 また理論計算の結果と観測データの比較も進めた。特に衝突ガスの密度や速度構造、フィラメント状構造の形成機構について、多くのヒントが得られた。これらをもとに、より具体的な観測データとの比較が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の銀河系内およびLMCでの研究により、銀河に落下してくるガスが及ぼす影響について理解が進んだ。HI放射とダスト放射の強度から、異なる金属量を持つガスの分布を示す手法は非常に強力であることがわかり、さらに広い天域にこれを適用していくことで、現在の銀河系にどの程度外来のガスが降着しているのか、知ることができる。これは銀河進化の理解に対して重要な情報を与える。星形成により銀河円盤で消費されるガスの量を推定すると、現在と同じ星形成率を過去数10億年維持できない問題が指摘されていたが、この問題の解決にヒントが得られると期待される。またその衝突で誘発される星形成も、銀河進化を促進させる。 今後の研究方策として、まず銀河系内の広範囲を領域に分け、HIガスとダスト雲の強度の相関を求め、ガス/ダスト比の連続的な分布図を作成する。また視線速度や形態的特徴から、銀河円盤に落下しているガス雲を特定、質量降着率を推定する。 LMCにおいては、より広範囲で軟X線の広がった分布を調べ、落下しているHIガス雲との空間的相関を検証する。また分子ガスの量が衝突により誘発的に増加しているかを調べる。NANTEN2望遠鏡が再起動できれば、これらの領域でCO 1-0/2-1輝線の同時観測を実行し、分子ガスの物理量の推定を行う。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Kinetic temperature of massive star-forming molecular clumps measured with formaldehyde2021
Author(s)
Tang X. D., Henkel C., Menten K. M., Gong Y., Chen C.-H. R., Li D. L., Lee M.-Y., Mangum J. G., Ao Y. P., Muehle S., Aalto S., Garcia-Burillo S., Martin S., Viti S., Muller S., Costagliola F., Asiri H., Levshakov S. A., Spaans M., Ott J., Impellizzeri C. M. V., Fukui Y., He Y. X., Esimbek J., Zhou J. J., et al.
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Journal Title
Astronomy & Astrophysics
Volume: 655
Pages: A12~A12
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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