2021 Fiscal Year Annual Research Report
ALMA長基線観測と新しい解析手法で探査する周惑星円盤
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00059
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
橋本 淳 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 特任助教 (20588610)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 周惑星円盤 / 電波干渉計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、観測ビジビリティのみをイメージングする新手法を用いて、衛星が形成される母体である周惑星円盤の系統的探査を、ALMAのダスト連続波のデータアーカイブを用いて行うことが目的である。2021年度は、本研究に関連する2つの査読論文を発表した。どちらも、本研究課題で用いる新手法を実際の観測データに適応し、有効性を実証した成果である。本研究課題遂行のためのキーポイントは、明るい軸対称な原始惑星系円盤に埋もれた、暗いポイントソースである周惑星円盤を効率的に取り出すことにある。データのキャリブレーションの過程で、見かけの非対称性が生じることがあり、この偽の非対称性と区別する必要がある。本手法を使えば、軸対称な成分をキャンセルすることが可能である。また、偽の非対称性もキャンセルすることが可能である。そこで、本手法の実効性を示すために、弱い非対称性のある原始惑星系円盤を持ったおうし座DM星とおうし座ZZ IRS星に本手法を適応した。これらの非対称性は比較的弱く、その存在の信憑性は乏しかった。本手法を適応した結果、軸対称成分を引き算して、非対称性成分を取り出すことに成功した。また、これまで知られていなかった新たな非対称性を発見することが出来た。本手法の有効性が示されたと言える。 本成果の副産物として、おうし座DM星とおうし座ZZ IRS星に付随する非対称性の特徴づけ(動径方向の幅など)を行った。これらの天体は太陽型星より軽い天体で(0.2-0.5太陽質量)、非対称性は惑星形成が行われていると考えられている重要な場所である。軽い天体にも関わらず、より重い星の周りの非対称性と傾向が似ていることが分かった。軽い星の周りでも重い星と同じように惑星形成が行われている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、高空間分解能(0.1秒角以下)および高感度(20Jy以下)のアーカイブデータのキャリブレーションを行うことが主な目的であった。非対称性を持つ原始惑星系円盤とコンパクトな周惑星円盤を区別するためには高空間分解能が必要である。また、すでに周惑星円盤が付随することが知られたPDS70cにおいて、その明るさは100uJyほどなので、確実な検出のためには高感度の観測データが必要である。アーカイブデータのキャリブレーションは無事に終了し、新しい手法を適応した周惑星円盤探査が進みつつある。 PDS70cを含む、PDS70星に対して本手法を適応し、PDS70cが無事に検出できることを確認した。一方で、PDS70bは確認できなかった。2021年度に報告された最新の観測結果によればPDS70bは広がった構造であると報告されており、アーカイブデータに本手法を適応しても、SNR不足により有意な検出とならなかった可能性がある。 本手法をアーカイブデータに適応した結果、1つの天体から有意なポイントソースが検出された。その後、別のデータセットが公開され(独立した2つのデータが存在)、クロスチェックのために本手法を適応したところ、ポイントソースは検出されなかった。本手法で見つけたポイントソースが本物かどうかの確認のためには、同じ観測や他の波長でのフォローアップ観測が必要である。これまで、本手法を用いても、PDS70c以外の周惑星円盤の確たる検出はできなかったが、今後もさらなる高解像度および高感度の観測データが公開されるので、引き続き探査を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究遂行のキーポイントは、明るい原始惑星系円盤に埋もれた暗い周惑星円盤を効率よく取り出すことにある。これには明るい原始惑星系円盤を選択的に精度よく引き算する必要がある。1つの方法として、円盤のモデル化を行い、観測データから引き算する方法が考えられるが、円盤が複雑だとモデルのパラメータの最適化など時間が掛かってしまい、現実的ではない。一方、本研究手法は観測ビジビリティのみをイメージングするため、モデル依存はなく、観測データそのもののみで円盤を引き算する点がメリットである。最近では、frankと呼ばれるガウス過程を用いて円盤構造を推定する手法が報告された。これにより、効率的に明るい円盤を引き算することが可能になる。実際に、ALMAラージプログラムの観測データにfrankが適応され、周惑星円盤の探査が行われている。本研究でもfrankを用いた周惑星円盤を行いたい。 最近のALMA観測では、ガスの速度構造が惑星との重力相互作用で変位している可能性が報告されている。変位が見つかれば、惑星がその場所に存在している可能性をピンポイントで示す証拠であり、惑星存在の強い証拠だとして注目を集めている。2021年10月より始まったALMAラージプログラムexoALMAでも、ガスの速度構造から惑星を探査することを目的としている。それらの計画で惑星存在が示された天体に対して、本研究手法に加えて、frankを用いた周惑星円盤探査を行ってゆきたい。 ALMA観測だけではなく、近赤外線高コントラスト観測でも、PDS70cに加え、ぎょしゃ座AB bという円盤に埋もれた若い惑星が2022年4月に報告された。ぎょしゃ座AB bは太陽よりも重い星の周りで発見された最初の若い惑星である。本年度はぎょしゃ座AB bの追観測を行ってゆきたい。
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[Journal Article] A likely flyby of binary protostar Z CMa caught in action2022
Author(s)
Dong Ruobing、Liu Hauyu Baobab、Cuello Nicols、Pinte Christophe、Abrahm Peter、Vorobyov Eduard、Hashimoto Jun、Kospal Agnes、Chiang Eugene、Takami Michihiro、Chen Lei、Dunham Michael、Fukagawa Misato、Green Joel、Hasegawa Yasuhiro、Henning Thomas、Pavlyuchenkov Yaroslav、Pyo Tae-Soo、Tamura Motohide
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Journal Title
Nature Astronomy
Volume: 6
Pages: 331~338
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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