2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Cryogenic Electronics for Dual-phase Liquid-Ar TPCs
Publicly Offered Research
Project Area | Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrinos |
Project/Area Number |
21H00084
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岸下 徹一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80789165)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | エレクトロニクス / 低温 / CMOS |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、まず液体アルゴン温度で生じるトランジスタの閾値電圧の変化に対応できる信号処理回路を試作した。回路を構成するトランジスタの動作点(ノード電圧)は基本的には電流で制御するため、温度によらずに一定の電流を各回路コンポーネントに供給できれば、原理上は低温環境でも全体の回路は動作するはずである。そこでフィードバック機構を用いて温度変化に伴う電流値を自動で制御するバイアス電流生成回路を新規に導入した。製作したASICを液体アルゴンと同等温度である液体窒素の中に直に浸し、チップの動作を測定したところ、以前の信号処理回路では、チャージアンプと波形整形回路を通して出力されるアナログ信号の波高値のゲインが室温から半減するといった現象が見られたが、今回のチップでは室温とほぼ同等の増幅率を維持できていることを確認した。 次に、より信頼性の高いコールドエレクトロニクスの設計環境を構築するため、サイズの異なるトランジスタを1チップに含めたテストチップを製作し、室温と低温での電流・電圧特性を測定した。過去の文献から低温環境では、主にトランジスタの閾値電圧の変動が回路設計上の大きな課題になると考えていたが、今回の測定では閾値電圧だけではなくドレイン電流の静特性自体も室温と比較して低温で2倍から4倍増加するという結果が得られた。これはトランジスタのキャリアの移動度が温度によって変化するためと解釈された。また静電流の増加度が主にトランジスタのゲート長に依存することが新たにわかり、次年度の設計で考慮するべき重要な知見が得られた。以上の開発はいずれもSilterra社の180 nm CMOSプロセスを用いて開発を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計・評価自体は当初の計画に従い、順調に進展していると考えられるが、昨今の半導体不足の影響によってこれまで設計にしようしていたSilterra社のCMOSプロセスが少量試作サービスの打ち切りによって利用できないという事態が生じている。そこで2022年度の開発では、より安定した試作サービスの提供が期待できるTSMC社の180 nmプロセスの利用を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度の開発では、まずSPICEシミュレーションレベルでSilterraとTSMCのトランジスタパラメータの違いについて詳細に比較検討したのち、閾値電圧とドレイン電流の静特性の増加を両方とも考慮した信号処理回路の設計を開始する。そして試作したチップの低温環境での動作を確認し、コールドエレクトロニクスの開発の見通しをつける。
|