2021 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノとクォークで挑む新しい力の正体
Publicly Offered Research
Project Area | Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrinos |
Project/Area Number |
21H00086
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
遠藤 基 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70568170)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クォーク / レプトン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、素粒子標準理論では説明のできない素粒子反応の実験結果がいくつか報告されている。これらの結果は素粒子標準理論のクォークやレプトンが未知の相互作用をもつことを示唆しており、2021年度は素粒子標準理論を超える新しい物理理論の正体の解明に向けて研究を進めた。まず、B中間子がD中間子とタウレプトンに崩壊する崩壊率の測定結果が理論予測と一致しないことが知られている。これはクォークとレプトンの間に未知の力が作用している可能性を示唆している。これまでに様々な新しい物理理論が提案されてきたが、2021年度はこれらの模型を近い将来どのように実験で検証していくのか明らかにした。次に、強い相互作用に関する理論の発展によって、B中間子がD中間子を含むハドロンへ崩壊する際の崩壊率の理論誤差が小さくなってきた。その結果、素粒子標準理論で実験結果を説明するのは難しいことが報告されていた。我々はこれらの理論計算には含まれていない効果があることを指摘した。この効果を入れても依然として素粒子標準理論では実験結果の説明は難しいことを明らかにして、さらに新しい物理理論の可能性を探った。また、新しくミューオンの異常磁気モーメントの測定結果が発表されたことを受けて、実験結果を説明するために新しい物理理論の可能性を探った。新しい実験結果は従来の結果をサポートするものであり、さらに実験の測定誤差が小さくなったことで、新しい物理理論による効果が見えてきた可能性が高まった。この結果はレプトンの一種であるミューオンが未知の粒子と相互作用している可能性を示唆している。2021年度はこの実験結果を超対称標準模型により自然に説明することができることを世界に先駆けて指摘し た。さらに、この模型では宇宙暗黒物質の残存量を自然に説明することができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつか新しい実験結果が発表されたことを受けて、これらの実験結果から未知の相互作用を探る研究に着手した。その一方で、当初の計画にあった電弱量子補正に関する研究に少々遅れた生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
クォークとレプトンの間に働く新しい力がもたらす素粒子反応の解明を目指す。とくに、本研究によって、クォークやレプトンを直接変化させる相互作用だけでなく、量子効果を通してクォークの種類が変化する効果を定量的に評価することができるようになってきたため、この研究を発展させる。さらに、最近、B中間子がレプトンに崩壊するいくつかのプロセスで標準理論の予想と一致しない結果が報告されている。また、ミューオンの異常磁気モーメントの実験結果から、ミューオンが未知の相互作用をもつことが示唆されている。これらの兆候を念頭に、レプトンとクォークの間に働く新しい力の特定を目指す。そして、すでに得られている実験データだけではなく、Belle II実験やLHCb実験を念頭に、近い将来に新しい相互作用の検出・検証に有効なプロセスの解明を目指す。
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