2021 Fiscal Year Annual Research Report
Formation theory and strengthen principle of kink folds: differential geometrical approach
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
21H00090
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長濱 裕幸 東北大学, 理学研究科, 教授 (60237550)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キンクバンド / 回位 / 重調和方程式 / 増分理論 / 微分幾何学 / Jaumann応力速度 / 褶曲 / 座屈 |
Outline of Annual Research Achievements |
キンク構造を含む波板構造の形成を支配する方程式は、Euler柱の座屈方程式と同形である。段ボールの強度や地層の褶曲の形成及び強度の見積もりにこの方程式は利用されている。この強度は、剛性(特に断面二次モーメント)、境界条件(拘束および端末条件)や柱のSlenderness ratioによって変化する。Biotの応力増分は、物体運動に伴う剛体回転速度で回転する座標系より見た客観性のあるJaumann応力速度に対応し、増分変形後の全応力は、初期応力と増分変形による部分や回転による部分からなる。この増分理論から、二次元異方性非圧縮変形の変位関数を変数とする一般化重調和(座屈)方程式は導出され、その解の分類によりキンク褶曲の形成条件が導かれる。格子回転・塑性回転・剛体回転の関係は、数学的回転則で表現されるが、キンクが存在する場合、この回転則は必ずしも満たさない。内部回転や端末・幾何学的拘束条件を考慮すると数学的回転則は満たされる。塑性変形に際して消費されるエネルギーの式と境界条件式は、それぞれ一般化座屈方程式や境界条件式と同形で、式中の曲げ剛性は、Euler-Schouten曲率に抗する加工硬化係数に相当し、Riemann-Christoffel曲率テンソルとその双対テンソルは、それぞれ歪の不適合度・回位と応力関数に対応する。連続分布する転位・回位の場に加わるPeach-Koehler力は、Eshelbyのエネルギー・運動量テンソルから求まる。エネルギー・運動量テンソルは材料に対するエネルギー解放率(破壊抵抗)と等価と見なせるJ-積分(経路不変積分)の被積分関数である。J-積分は曲率テンソルやEinsteinテンソルと関係し、微分幾何学と位相幾何学を結ぶGauss-Bonnet定理にも対応していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したように、本年度の研究成果として地質体中のキンク褶曲(キンクバンド)や金属・高分子繊維複合体中でのキンクの発生条件にも適応可能と考えられているBiot (1963, 1965)の増分変形理論の微分幾何学的理論背景を再考した。Biot (1965)が定義した応力増分は、Jaumannの応力速度に対応している。そこで有限変形理論における変形速度テンソルや時間微分について微分幾何学の視点から回転移動座標系を用いて再検討し、増分理論を再考した。増分変形後の全応力は、初期応力と増分変形による部分と回転による部分からなっている、したがって、ある平衡の状態から境界条件や物体内の物性が変化して次の平衡に移行する褶曲過程を表すことに適したBiot (1965)の増分変形理論は、粘弾性体とみなされる地質体中のキンク褶曲や弾塑性体(地盤)・金属・高分子繊維複合体中でのキンク座屈褶曲の発生条件の誘導にも適していることを明らかにした。またこの理論と連続転位分布論の回位とキンク強化の関係を微分幾何学的アプローチで考察し、連続分布する転位・回位の場に加わるPeach-Koehler力は、Eshelbyのエネルギー・運動量テンソルから求まることを指摘した。 キンク褶曲の発生条件を調べるため、次年度に岩石変形実験結果の解析を本格的に行うことにより、キンク褶曲(キンクバンド)の発生とその強化の条件を実験と微分幾何学の観点から明らかにすることを計画している。特に構造地質学的に重要な黒雲母などの層状ケイ酸塩鉱物の衝撃圧による塑性変形時のキンク褶曲及びRipplocationの形成機構を岩石実験により明らかにし、次年度から研究成果を国際学術雑誌に投稿(あるいは掲載)していく。これらのことから、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
塑性変形に際して消費されるエネルギーの式と境界条件式は、それぞれ一般化座屈方程式や境界条件式と同形で、式中の曲げ剛性は、Euler-Schouten曲率に抗する加工硬化係数に相当する。またRiemann-Christoffel曲率テンソルとその双対テンソルは、それぞれ歪の不適合度・回位と応力関数に対応する。連続分布する転位・回位の場に加わるPeach-Koehler力は、Eshelbyのエネルギー・運動量テンソルから求まり、エネルギー・運動量テンソルは材料に対するエネルギー解放率(破壊抵抗)と等価と見なせるJ-積分(経路不変積分)の被積分関数であることを明らかにしてきた。さらにJ-積分は曲率テンソルやEinsteinテンソルと関係し、微分幾何学と位相幾何学を結ぶGauss-Bonnet定理にも対応している。そのためこれらのことを連続転位分布論とコセラ力学との関係を微分幾何学的に整理し、キンク形成・キンク強化理論との関係をより微分幾何学的アプローチで今後も明らかにする。 次年度に岩石変形実験結果の解析を進めることにより、キンク褶曲の発生と強化の条件を明らかにする予定で、特に構造地質学的に重要な黒雲母などの層状ケイ酸塩鉱物の衝撃圧による塑性変形時のキンク褶曲及びRipplocationの形成機構を岩石実験により明らかにする。本年度研究目的の一つでもあるキンク強化についての言及が僅かなであったが、キンク強化についての知見を整理し、次年度から研究成果を国際学術雑誌に投稿(あるいは掲載)していく。
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Research Products
(6 results)