2021 Fiscal Year Annual Research Report
高対称性セラミックスにおけるキンク形成機構の深化と展開
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
21H00091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 紘士 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20823701)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セラミックス / 酸化物 / キンク変形 / マイクロ力学試験 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
キンクと呼ばれる材料中の結晶回転領域を利用した「キンク強化」が、革新的な材料強化機構として注目されており、本概念を金属のみならず高分子・セラミックス材料にまで展開することが求められている。申請者は、優れた強度をもつ反面、塑性変形能に乏しく脆性的なセラミックス材料では、「キンク強化」以上にキンクを塑性変形機構として利用した「キンク強靭化」こそが有効と考え、これまでその実効性およびメカニズムを調査してきた。本研究は、当該領域 (MFS材料科学) の第1期公募研究で我々が報告したイットリア安定化ジルコニア (YSZ) セラミックスにおける回転型キンク形成機構 (H. Masuda et al. Acta Mater. 2021) をさらに深く理解するとともに、この理解を結晶対称性の高い立方晶型の酸化物セラミックス群へと展開することを目指すものである。 当該年度は、様々な結晶方位をもつ立方晶YSZ単結晶に対してマイクロピラー圧縮試験を行い、塑性変形特性の方位依存性を調査した。先行研究からキンク形成が予想された<111>圧縮軸方位において公称ひずみ40%に至っても脆性破壊を生じない優れた塑性変形能が現れることを確認した。変形後のピラー断面の透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察を行い、ピラー内部には連続的な結晶方位変化を伴う回転型キンクが形成したことが確認された。これらの実験結果は、YSZでは特定の結晶方位においてキンク強靭化が可能であることを示唆している。さらに、立方晶ペロブスカイト構造をもつSrTiO3に対する単結晶マイクロピラー圧縮試験においても、特定の圧縮軸方位において塑性変形能が向上することが確認された。この結果は、特定の結晶方位における変形能向上指針が立方晶型の酸化物セラミックス群に一般化できる可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YSZにおけるキンク形成機構の理解・他の酸化物セラミックス群への展開のいずれの内容も当初の計画通りに進行している。中でも、YSZの<111>方位における塑性変形能の向上のように、当初の期待を上回る顕著な成果も得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度の結果をもとにさらなる調査を進める。YSZおよびSrTiO3における塑性変形能向上をもたらす要素を抽出し、そのメカニズムを特定するとともにキンク形成との関係を調査する。同時に、立方晶型酸化物セラミックス(Y2O3、MgAl2O4、Y3Al5O12等)への適用可能性を調査し、結晶方位制御による塑性変形能向上指針の一般化を目指す。
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Research Products
(1 results)