2021 Fiscal Year Annual Research Report
Strengthening mechanisms and their control by stabilization of single kink and/or kinking area
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
21H00105
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
鈴木 真由美 富山県立大学, 工学部, 教授 (20292245)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キンク界面 / 熱処理 / 結晶回転 / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で用いた供試材は本新学術領域研究で共通試料として提供されるMg85Zn6Y9一方向凝固材と同組成の鋳造多結晶材である.一方向凝固材から薄帯試料を切り出し,曲げ変形を施すと薄帯試料の圧縮側表面には明瞭な表面起伏を有するくさび型のキンクが形成されるが,繰り返し曲げ試験の結果,一旦材料内部にキンクが導入されると,その後に与えられた外部応力(ひずみ)に応じてその界面性格(回転角,回転軸)を変化させることで変形に追従することがわかった.一方で,薄帯試料表面のキンク界面の位置は光学顕微鏡レベルではほとんど変化しないため,一旦形成されたキンク界面の易動度は低いと考えられる.この傾向はキンク導入後に550~650Kの熱処理を施した場合も同様であった. また,薄帯試験片に対して曲げ試験や熱処理等の各段階において,キンク部分ならびに母相の硬さを調査した結果,室温変形によって導入されたキンク帯部分は,母相に比べて明らかに硬さが増加すること,熱処理後硬さはキンク帯と母相の両方が増加する傾向が認められた.更に,一旦導入された単独キンク帯に対して外部ひずみを反転させると,キンク帯部分の硬さの増加が停滞する場合でも母相の硬さは大きく増加する傾向が認められた. すなわち,キンクを有するMg85Zn6Y9一方向凝固材への熱処理はキンク帯部分のみならず,母相の強度も増加させる効果がある.一方で,熱処理に伴うキンク帯近傍領域の強度増加がキンク界面の安定化に起因するのか,それともキンク内部あるいはその周辺の転位によってもたらされるのかは不明であるため,次年度に詳細な調査を行う予定である.なお,バルク材への多軸予ひずみによるキンク分布制御についても検討を行ったが,キンク帯の均一分布とキンク密度の制御は困難であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で検討した3点の項目のうち,ミクロ変形帯(2021年度成果により,非底面すべり帯であることを確認)とキンクの協調的な階層構造の形成を制御することは困難であることがわかった. 一方で,塑性変形時に導入されたキンク帯に対し,そのひずみを反転させた場合の応答については実験的な検討を進めることができ,多くの場合一旦形成したキンク帯の界面性格を変化させることでその後の変形に追従していくこと,一部のキンク帯では,キンク帯を形成するGN転位がSS化していく現象を示唆できた.また,キンク群の安定構造の実験的検証については,熱処理を行うことで,キンク帯部分のビッカース硬さが増加することを明らかとした.2022年度は熱処理の影響についてさら に検討を進める.室温塑性変形を受けたバルク材へ650K以下の熱処理を施すと,SEM-EBSDレベルでは明瞭な組織変化が認められないにもかかわらず早期破断が生じる機構は未解決の事項であるが,2022年度に検討を進める予定であり,(2)に相当すると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度結果より,長周期積層構造型Mg85Zn6Y9合金一方向凝固材の曲げ試験後に認められた表面起伏はa転位の非底面すべりの活性化に伴い生じたすべり帯であることがわかったが,キンク帯とこれらのすべり帯が協調的に階層的な構造を形成する傾向は認められなかった.一方で,薄帯試料調整時に試料に表面凹凸を適切に導入することで薄帯試料に単独的なキンクが導入できることが明らかとなった. そのため,2021年度に実施した【1.キンク境界の可逆移動とその性格】の項目は引き続き実験を継続し,キンク界面性格と繰り返し曲げ変形中の表面起伏変化について,より定量的な検討を行うものとする. また,当初計画予定であった【2.単独キンク界面性格と熱処理の相関】については予定通り実施する.本検討は2021年度の研究実績概要記載の通り,熱処理を施すことでキンク境界近傍の硬度が増加することが明らかになったため,キンク界面の易動度に加えてその強化能についても検討を行う.更にTEM(必要に応じてHR-TEM)を用いたキンク近傍の組織観察を行い,熱処理によるキンク組織の強化機構を検討する. また,【3.キンク群の安定構造の実験的検証】については,室温予変形と熱処理を施し,キンク群の安定化をはかることを検討項目としているが,多結晶材を用いると一部の熱処理材で早期破断が生じる機構が不明のため,この点についても検討を行う.
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Research Products
(14 results)