2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular simulation analysis of crystalline polymer materials for kink strengthening
Publicly Offered Research
Project Area | Materials science on mille-feullie structure -Developement of next-generation structural materials guided by a new strengthen principle- |
Project/Area Number |
21H00111
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
萩田 克美 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 講師 (80305961)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 結晶性高分子 / 分子シミュレーション / 熱延伸 / ミルフィーユ構造 / 強化原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリエチレン(PE)等の熱延伸による強化と破壊の分子レベルでのメカニズムを解明するために、大規模な分子動力学(MD)計算の手法検討を行った。実験では、PE は、結晶化前の熱延伸が強いほど、弾性率が大きく破断歪みが小さくなること(引張試験)や、延伸に応じた2次元散乱パターンの変化(散乱実験)を報告している。R3年度の研究では、TraPPE-UA力場を用いたユナイテッドアトム模型を用い、等温結晶化させたPEを一軸延伸する大規模MD計算で、応力歪み曲線と2次元散乱パターンの同時評価を行い、実験事実を概ね再現しうることを確かめた。また、MDシミュレーションのメリットを活かし、熱延伸させたPEが形成するミルフィーユ状の結晶ドメイン構造について、3次元構造体としての特徴分析を進めた。これらの計算の補充を行いつつ、論文準備中である。 また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とPEの結晶化挙動の違いを、MD計算で把握するために、全原子MD計算で、1本鎖の折りたたみ挙動や多数本の結晶化挙動を調べ、結晶化を示す温度などに明確な違いがあることを把握した。 さらに、高分子系でミルフィーユ構造を形成する分子シミュレーション手法に関する検討を行った。散逸粒子動力学(DPD)法による相分離や、PEの粗視化ポテンシャルを用いた結晶化について検討した。DPD法で鎖交差禁止のON/OFFを比較できるMP-SRP法に関して、コード整備を行い、関連の論文を出版した。粗視化ポテンシャルを用いたPE結晶化の検討では、ミルフィーユ状のPEラメラ結晶構造を延伸させ、構造の変形や再結晶化と応力歪み曲線の関連について検討した。論文準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験との連携に関する議論を行い、ポリエチレン(PE)における熱延伸による強化と破壊の分子レベルでのメカニズム解明に注力する方針とした。実験で計測された応力歪み関係や2次元散乱パターンの特徴を再現するために、大規模な分子動力学(MD)計算の手法検討を行った。 本研究では、TraPPE-UA力場を用いたユナイテッドアトム(UA)模型を用い、HPCIスパコンを活用することで、多数のGPUで効率的な並列計算が実施できることを確かめた。400万粒子規模と1600万粒子規模のUAMD計算で事前延伸後の結晶化を進行させ、実験で計測された2次元散乱パターンの特徴の再現可能性を検討した。事前延伸後に、5000ns程度の長時間静置することで結晶化を十分に進行させた。そのようにして得た構造の2次元散乱パターンは、事前延伸率に応じて異なり、実験で得られた特徴的な挙動と一致していた。得られた構造を一軸延伸する大規模MD計算を行い、応力歪み曲線と2次元散乱パターンを同時評価した。応力歪み曲線では、事前延伸率の増加とともに、応力が大きくなる挙動も実験と概ね一致していた。R4年度の本格的な計算や解析に向けて準備検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は、主に100%, 200%, 400%で構造形成前の延伸率を変えて等温結晶化させるPEのUAMD模型の大規模計算を完了させ、一軸伸張計算を行う。結晶化進行中の構造や一軸伸張中の構造変化を原子座標データから分析し、強化原理のメカニズムを分子論的に解明する。特に、結晶化した部分の構造的特徴を、電子顕微鏡観察像との比較検証を行うことで、シミュレーションモデルと実験との対応の高さを確かめるとともに、機械的性質への寄与を詳細に分析する。 上記に加えて、ブレンド系におけるミルフィーユ構造形成や材料強化のメカニズムの解明にも挑む。実験では、PVDFとポリメチルメタクリレート(PMMA)とのブレンド系は、配合比によりPVDFの構造形成が変わり、PVDFの比率低下と共に、弾性率が低下し2次元散乱パターンが変化することが分かっている。ブレンド系では、モノマー構造由来の相溶性が関係すると予想される。そのため、原子構造の特徴を取り込んだMD計算で、ブレンド系において、どのような特徴的な構造形成挙動を示すかについて、試行的に調べる。既に実験されたPVDFとPMMAのブレンド系に限定せずに、UAMD計算で合理的なシミュレーションが実施可能な材料ブレンド系を探索し、実験とシミュレーションが融合した成果の創出を目指す。材料系の選定後に大規模なMD計算を行い、応力歪み曲線と2次元散乱パターンを同時評価し、実験と比較検討することで、ミルフィーユ構造およびキンク形成などによる高強度化のメカニズムを検討する。
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Research Products
(2 results)