2021 Fiscal Year Annual Research Report
Structure analysis of subsystems in two-electron positronium compounds
Publicly Offered Research
Project Area | Clustering as a window on the hierarchical structure of quantum systems |
Project/Area Number |
21H00115
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 琢磨 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (40844965)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 陽電子 / 原子・分子 / エキゾチックアトム / クラスター階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
一つの原子核と電子で構成される系を原子と呼ぶが、電子と陽電子が結合したポジトロニウム(Ps)は原子に“準ずる”系であり、原子と結合して化合物(ポジトロニウム化合物)を作る。この系では、Psが部分系として現れて分子の性質を示すこともあれば、陽電子が存在しない時の電子相関が維持されて原子の性質を示すこともある。すなわちポジトロニウム化合物は分子と原子の階層にまたがる新しい階層に属する。本研究では、二電子系ポジトロニウム化合物に着目し、四粒子系波動関数を三次元構造解析することでPs部分系を可視化する。部分系の構造や歪みの情報に基づいて、Ps化合物の新しい描像を原子と分子の両面から解明することを目的とする。 本年度は、最も単純なPs化合物の一つである水素化ポジトロニウムについて、二つの粒子間ベクトルの角度と大きさの相関を計算した。これらの系は全軌道角運動量が0であるため、部分積分が容易な基底関数系を用いても厳密な波動関数を得ることができる。本年度の研究で、水素化ポジトロニウムにおいて電子と陽電子が連れ立って運動している様子が三次元解析から明らかになり、Ps部分系の存在が示された。また、水素化ポジトロニウムの第二束縛状態に研究を展開した。この状態は、水素原子とポジトロニウムの励起状態同士が結合した系であり、束縛エネルギーの観点から、基底状態に比べて励起Ps部分系の発現がより明確であることが期待されていた。本研究では、この状態の光学遷移による自然解離過程を計算し、この描像を裏付ける結果を得た。加えて、これまで知られていなかった系全体がわずかに構造変化を起こす際の放出光スペクトルを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標としていた水素化ポジトロニウムの基底状態について、構造解析コードが完成した。これに加えて、水素化ポジトロニウムの第二束縛状態の構造を、光の放出過程という実験的に検証可能な現象と関連づけることができた。これは、研究開始当初は計画していなかった新しい角度での部分系のプローブである。今後、構造解析コードと光学遷移過程の両面から研究を展開できる。したがって、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
水素化ポジトロニウムの共鳴状態や、コアモデルを用いた種々のポジトロニウム化合物について、構造解析を行い、その原子・分子像を整理する。また、1光子吸収に伴うポジトロニウム化合物の解離断面積を複素座標回転法により計算し、その振る舞いと始状態の構造の関係を明らかにする。部分系としてポジトロニウム負イオンや原子負イオンの構造が化合物内でどのように歪むかを分析し、新奇な化学結合機構を探索する。
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Research Products
(11 results)