2021 Fiscal Year Annual Research Report
クォークグルーオンプラズマ中における軽重クォーククラスター生成とその実験的帰結
Publicly Offered Research
Project Area | Clustering as a window on the hierarchical structure of quantum systems |
Project/Area Number |
21H00124
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅川 正之 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50283453)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クォークグルーオンプラズマ / クラスター / 重クォーク対 / 量子開放系 / 散逸 / QCD |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初の予定を若干変更して、非閉じ込め相における軽重クォーク対ではなくJ/ψ、Υなどの(反)重クォーク対というクラスター的相関状態の量子的時間発展および(反)重クォーク対という相関状態の相対運動を、量子開放系の理論の枠組を用いて研究を行った。まず、非閉じ込め相におけるJ/ψ、Υなどの(反)重クォーク対状態の時間発展については、初めてカラーの自由度を考慮し、時間発展を記述する際に、通常の中間子としての状態であるカラー一重項の他に、カラー八重項の状態も含めて考察を行った。また、現実のQCDの対称性であるカラーSU(3)に加えてカラーSU(2)の場合も考察し、SU(2)の場合にはSU(3)においては存在しないある対称性が存在し、時間発展において重要な働きをすることを発見した。この結果については、原著論文として発表した。非閉じ込め相における(反)重クォーク対の相対運動の熱化の記述においては、NRQCDおよびpNRQCDの枠組で、その時間発展についての基礎方程式であるLindblad方程式に反跳による散逸の効果を初めて取り入れて計算を行った。今までの反跳の効果を含めない計算では、系はオーバーヒーティングを起こし、熱平衡には達しなかったが、散逸の効果を含めることにより、系は高エネルギー状態のオーバーヒーティングを起こすことなく、近似的に熱平衡に近づくことが判明した。また、NRQCDとpNRQCDの比較を行い、時間発展の初期においては二つの近似的理論は同様の振る舞いを示すことを見出した。この結果については現在原著論文執筆中である。 さらに、QCDに相図において存在すると考えられている臨界点近傍においてチャームクォークに対しても動的臨界現象が発現する可能性を指摘して、臨界点を探索する可能性を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、COVID-19のパンデミックにより国内学会、国際学会の多くが中止またはオンライン化、ハイブリッド化され、それらにおいて予定していた、研究成果の発表および情報の収集が出来ない、あるいは不完全にしか出来なくなるという状況であった。それらの結果、予定していたよりも研究の進捗状況は遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の、非閉じ込め相における(反)重クォーク対というクラスター的相関状態の時間発展、(反)重クォーク対の相対運動の熱化の記述の、散逸効果を含めた量子開放系の 理論の枠組を用いた研究について、NRQCDによる結果とpNRQCDを用いた結果を出来るだけ早くまとめ、比較考察して、原著論文として発表する。また、クォークグルーオンプラズマ中の量子的相関(クラスター的相関を含む)を判断する基準となる物理量を探索し、必要ならば格子QCDなどの第一原理計算を行う。
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