2021 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis of nanostructured high entropy alloys by using multicomponent hydroxide nanoparticles
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
21H00149
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
樽谷 直紀 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (60806199)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 層状金属水酸化物塩 / ナノ粒子 / ハイエントロピー合金 / 多元材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多成分系水酸化物ナノ粒子を原料とした新規なハイエントロピー合金ナノ材料の合成法を模索する。原料とする層状金属水酸化物塩 (Layered Metal Hydroxide Salts, LHS) は金属イオンが重縮合反応して生成するが、価数が2-4価の金属イオンであれば遷移金属や典型金属を問わず共沈現象によって原子レベルで均質に混合できることが知られている。等比多成分系LHS結晶を数nm大のナノ粒子として合成することを第1の目的として取り組んだ。これまでの研究でナノ粒子合成法を確立しているNi系LHSに元素を添加していった。本研究では溶液のアルカリ化によってイオン性前駆体からナノ粒子を生成する。アルカリ化に伴う溶液のpH、電気伝導率、酸化還元電位の変化をその場追跡すると、NiやCoを主成分とする系でナノ粒子形成が優位であることを発見し、最大で5種の金属カチオンからなるLMHナノ粒子が得られることを明らかにした。 次にLHSナノ粒子の還元反応を促すことによる合金化を進めた。エチレングリコールなどを溶媒兼還元剤として利用するポリオール法は分散状態でナノ粒子を合成できる本研究と親和性が高いと考え、採用した。Ni-Co系LHSの還元反応を試みたところ、水酸化物原料から合金が得られた。しかし、金属カチオンを等比で仕込んだにも関わらず、得られた合金のNi:Co組成は9:1であった。また粒子は数百nmと粗大であった。そこで別の還元手法を模索した。金属水酸化物塩は結晶内部に有機アニオンを含むことに注目し、その熱分解に伴う還元を試みた。同様にNi-Co系LHSを用いたところ、狙い通りNi:Coを所望の割合で含む合金が得られ、さらには一部でナノ粒子が生成することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究でLHSナノ粒子生成の手法を確立していたものの、金属カチオンを2種含む程度と多元系へは展開していなかった。そこで本年度まず、どういった元素系であれば金属カチオンを共沈現象により均質混合したナノ粒子が得られるのかを網羅的に調査した。その結果、NiやCoを主成分とする場合にナノ粒子が生成することを明らかになり、最大で5種類の金属カチオンを等比付近で混合したナノ粒子を作製できることを見出した。この調査の中で、反応開始後の溶液電気伝導度、ガラス電極の電位および酸化還元電位のその場測定データを網羅的に取得したことで、ターゲットする多元系の組成に合わせた合成のチューニングが可能となりつつある。 次にLHSから金属相への還元反応を試みた。ポリオール法は、加熱されたポリオール(エチレングリコールなど)が溶媒かつ還元剤として働くことから、イオンを前駆体とした金属微粒子合成に用いられてきた。作製したLHSナノ粒子を原料としてポリオールによる還元反応を促した。数時間反応させると固体が生成し、それが合金であることが判明した。期待した通り、LHSナノ粒子から金属相に還元できた一方で、その組成は仕込みから大きくずれていた。さらに得られた合金は数百nm以上のマイクロ粒子であり、ナノスケールには大きさが制御できないことが明らかになった。そこで次に不活性雰囲気での熱処理を試みた。LHSの結晶中には有機分子を導入でき、その分解に伴って発生する還元性ガス(一酸化炭素など)を利用する。焼成した試料を電子顕微鏡で観察すると100 nm程度の大きな粒子が混在するものの一部では10 nm程度の微小な粒子の生成が認められ、元素分析の結果では狙った組成の合金が生成した。このような工夫によって合金ナノ粒子を得るに至っており、ハイエントロピー合金化も近く達成できると想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では多成分系LHSナノ粒子の合成方法を確立し、得られたLHSナノ粒子を原料とした合金材料合成を試みた。各種の溶液測定からLHSナノ粒子生成を確認し、最大で5元系までの組成で合成した。得られたLHSナノ粒子の大きさは15.7-3.3 nmであり、元素数の増加とともに粒子径が減少する傾向であった。LHSナノ粒子を原料として1)ポリオール法、2)不活性雰囲気での熱処理法の2つの手法で還元を試みた。どちらの手法でも合金が得られたが、ポリオール法では仕込み組成からずれた粗大な粒子が生成していた。一方で熱処理法では組成ずれはなく、さらに一部でナノ粒子生成が認められた。これをもとに、次年度には基材へナノ粒子を単独で担持する工夫をしてから、不活性雰囲気で熱処理することで5-10 nmの微細な合金ナノ粒子を作製することを試みる。また、5元系以上に元素を混合したLHSナノ粒子を用いたハイエントロピー合金化を進める。担持する基材として導電性の高い材料を選択して、ハイエントロピー合金ナノ粒子の電気化学触媒特性の解明も進める。MgやAlは還元電位が極端に大きいために水中では酸化物を形成するがハイエントロピー合金化によってそ酸化が抑制されれば優れた触媒として働くことが期待できる。既存のイオン性前駆体を用いる手法では合金ナノ粒子化が困難であったが、LMHを経由する本研究手法ではその作製可能性が高い。本手法の特異性を活かした高機能なハイエントロピー合金ナノ粒子作製を精力的に進める方針である。
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