2021 Fiscal Year Annual Research Report
Production of High-Entropy Alloy Nanoparticles by Top-Down and Bottom-Up Laser Processes
Publicly Offered Research
Project Area | High Entropy Alloys - Science of New Class of Materials Based on Elemental Multiplicity and Heterogeneity |
Project/Area Number |
21H00152
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液中レーザーアブレーション / 高パルス繰り返しレーザー / プラズマ / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルクの合金試料を原料とする液中レーザーアブレーション(トップダウンプロセス)ならびに有機金属錯体やイオン溶液を原料とするレーザープラズマ融合(ボトムアップアプローチ)の両輪による合金ナノ粒子作製を試みた。これまで単一金属ナノ粒子の作製には近赤外フェムト秒レーザーを用いてきたが、繰り返し周波数(1 kHz)が小さいためナノ粒子の収量が極めて少ないことが問題であった。そこで、新たに高パルス繰り返しが可能な紫外ピコ秒レーザー(1 MHz)を導入し、さらに一箇所への過度の照射を避けるためガルバノスキャナーを導入して集光レーザーを試料表面で掃引する光学系を構築した。 トップダウンでは電着により作製したFeCoNi合金板(非平衡bcc)を水中でアブレーションしたところ、わずかに着色したコロイドとなった。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところシングルナノメートルオーダーサイズの粒子が多くみられ、電子回折像からfcc構造であることがわかった。この試料の本来の平衡状態はfcc+bccであるが、高温相はfccなので急冷によってfcc単相になったものと考えられる。 ボトムアップでは遷移金属錯体を原料とし、単体(Fe、Co、Ni)ではシングルナノメートルオーダーサイズのナノ粒子の生成がそれぞれ確認できた。しかしながら、現在のところ遷移金属錯体混合系では合金生成の明瞭な結果が得られていない。そこで貴金属を含む三元合金ナノ粒子(AuFePt)の作製も試みた。塩化金(III)酸水溶液へのレーザー照射では出力、照射時間、そしてPVPの分子量とナノ粒子生成の関係を検討した。一方、塩化金(III)酸、塩化白金(IV)酸、塩化鉄(II)の混合水溶液では塩化金酸単独とは異なりレーザー出力とPVPの分子量に強く依存する特徴的な吸収変化を示した。しかし、この変化は100 nmを越える大きな金ナノ粒子あるいは凝集体の生成と分解を示唆すると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トップダウンでは合金試料(Fe-Co-Ni)の液中レーザーアブレーションによって固溶体のfcc合金金属ナノ粒子を得ることが出来た。しかし、元素組成の決定までには至っていない。これは用いた学内の電子顕微鏡の性能低下によるもの、あるいは数十ナノメートル程度の範囲でナノ粒子単独での測定を試みたためと思われる。他の試料ではあるが、1ミクロン程度の広い範囲では元素マップ測定に成功している。また、得られた粒子の粒径分布も広く、不定形粒子も見られた。これは当初ガルバノスキャナーを使用しなかったために、一か所への過度の照射による試料の掘削と粒子の融合が起こったためと思われる。ガルバノスキャナーを用いての実験は現在実施中である。一方、ボトムアップでは遷移金属錯体を原料とし、単体(Fe、Co、Ni)ではシングルナノメートルオーダーサイズのナノ粒子の作製に成功した。しかし、遷移金属錯体混合系(Fe-Co-Ni)では現在のところ単一金属と同じ実験条件の下では合金ナノ粒子は生じていない。金属塩(Au, Fe, Pt)を用いた実験では非常に興味深い現象が認められたが、酸化還元電位の貴なものからの還元を防ぐことはできず、合金作製には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
トップダウンとボトムアップいずれもレーザー照射による液体の温度上昇が顕著であった。また、現状ではガルバノスキャナーをトップダウンあるいはボトムアップで使用したとしても生成粒子への再度のレーザー照射によって粒子の融合や分解が生じることを防ぐことはできない。そのためフローセルを新たに製作して、溶液を循環させる連続光照射系を構築して実験を行う。すでにアルミニウムブロックからフローセルを試作し、水を循環させるために表面のアルマイト処理を行った。しかし、ホースとの接続部などの表面処理は難しく白さびが発生した。そのため、テフロンブロックの加工あるいは3Dプリンターによって所望のフローセルの製作を試みる。初年度で用いた紫外ピコ秒レーザーはレンタル料が3倍となることが予告され、本予算では継続して使用することが出来ない。そのため、繰り返し周波数、パルス幅、そして出力では劣るが、近赤外、可視光、そして紫外光の出力が可能なピコ秒レーザーを購入して実験に用いることにした。そのため、新たに近赤外光および可視光用の光学部品を購入する必要がある。トップダウン用の試料にはレーザー照射による組成変化の検討が容易である平衡fcc 構造のFeCoNi合金板を電着により作製して実験に供する。ボトムアップでは引き続き金属錯体混合系、そして金属錯体-金属塩混合系を試みる予定である。トップダウンとボトムアップで作製する合金粒子の同定には元素マップの測定が必須であり、測定用試料の準備も含めて電子顕微鏡による元素マップ測定の手順を改良する。
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