2021 Fiscal Year Annual Research Report
革新レーザー技術で拓くエキゾチック物質の量子操作
Publicly Offered Research
Project Area | Toward new frontiers : Encounter and synergy of state-of-the-art astronomical detectors and exotic quantum beams |
Project/Area Number |
21H00165
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
桂川 眞幸 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10251711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミューオニウム / 真空紫外 / レーザー分光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
光量子科学はレーザーの極限化技術とともに互いに表裏一体をなし発展してきた。ほぼ全ての領域が開拓されてきたように見える一方で、レーザーの発明から60年を経た現代でも、全く手つかずのまま残されたレーザー技術の領域がある。真空紫外域(< 200 nm)における単一周波数・波長可変レーザー技術はまさにその一つである。 研究代表者は、非線形光学過程に人為的な制御を組み込むことで、この真空紫外域におい、現実に高分解能レーザー分光をおこないうる性能をもつ単一周波数・波長可変レーザーを実現することが可能なことを示してきた。これまでに原理実証実験もおこない、予測に一致する波長変換が可能なことも実証されている。 この公募研究では、ミューオニウムのレーザー冷却に焦点を当て、この技術をその目的にカスタマイズした真空紫外域単一周波数波長可変レーザーを実際に実現すること、さらに、それを用いたレーザー分光実験をおこなうことを目指している。 公募研究の初年度に当たる2021年度は、パラ水素分子気体を非線形光学媒質とする高次誘導ラマン散乱光発生過程を典型例として原理実証された結果を、高次過程に拡張する研究を進め、実際に数十%の効率で特定次数の誘導ラマン散乱光にエネルギー集中できることを実験的に示した。 また、並行してこの技術を真空紫外域に拡張するための様々な準備を進めた。技術的に鍵になるのは、励起レーザーに用いる注入同期単一周波数波長可変 Ti:sレーザーの周波数純度やビーム品質を良質な状態(端的には単一縦・横モード)に保ったまま、如何に高出力化するかという点にあった。実際にその開発を進め、従来に比べて、4倍近い出力が可能なレーザーを実現する目途が立つところまで到達できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミューオニウムのレーザー冷却を念頭に、その目的にカスタマイズした真空紫外域単一周波数波長可変レーザーの実現に向けた研究を進めた。技術のポイントは、光位相の任意操作技術を非線形光学過程に組み込むことで、非線形光学過程を人為的に操作する点にある。原理的には量子効率1の波長変換も可能なことが理論と詳細な数値計算の双方から示されている。 公募研究の1年目に当たる2021年度は、パラ水素分子気体を非線形光学媒質とする高次誘導ラマン散乱光発生過程を典型例として原理実証された結果を、高次過程に拡張する研究を進め、実際に数十%の効率で特定次数の誘導ラマン散乱光にエネルギー集中できることを実験的に示した。液体窒素温度下に置かれたパラ水素分子気体(純度: > 99.99%)に、如何に光位相の任意操作技術を組込むかの技術的に困難な問題をクリアーしたことが上記の成果に繋がった。 また、並行してこの技術を真空紫外域に拡張するための様々な準備を進めた。技術的に鍵になるのは、励起レーザーに用いる注入同期単一周波数波長可変 Ti:sレーザーの周波数純度やビーム品質を良質な状態(端的には単一縦・横モード)に保ったまま、如何に高出力化するかという点にあった。実際にその開発を進め、従来に比べて、4倍近い出力が可能なレーザーを実現する目途が立つところまで到達できた。また、真空紫外域への波長変換をおこなうための媒質を封入するセルの開発も進め、実際にその発生実験を試みる環境を整えることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、1年目の2021年度に開発を進めた、高い周波数純度とビーム品質を保ちつつ高出力を得ることができる注入同期単一周波数波長可変 Ti:sレーザーの開発を完成させることを目指す。周波数純度、ビーム品質と得られる最大出力を定量的に評価する。その上で、開発したこのレーザーを、1年目に実現した高次誘導ラマン散乱光発生過程に人為的な光位相操作技術を組込む実験に適用することで、特定の高次光の発生の効率と操作性がどれくらい向上させられるかを見極める実験を進める。 また、並行して、この発生実験を真空紫外域でおこなうためのシステムを完成させ、実際に真空紫外域における発生とその評価を実施する。これをおこなうためには、媒質を封入するセルに加えて、光学系、検出系を含めた全て真空紫外域用に整える必要があり、1年目に準備した各部品を用いて真空紫外システムとして完成させる。 全てが順調に進めば、発生光を用いて、水素原子をテスト媒質としたレーザー分光実験を試みる。さらに、得られた実験結果をもとに、冷却のための最初のシナリオ作りに踏み込むことを目指す。
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