2021 Fiscal Year Annual Research Report
ベイズ型行動選択の理論・回路・細胞のマルチスケール解明
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive understanding of multi-scale dynamism of neuropsychiatric disorders |
Project/Area Number |
21H00187
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船水 章大 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (20724397)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベイズ推定 / 強化学習 / 知覚意思決定 / 光遺伝学 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
外界の知覚は,感覚刺激だけでなく,脳の内部状態・事前知識に依存する.本研究は,ベイズ理論に注目して,脳が感覚情報と事前知識のバランスを調整し,行動を最適化する機構を検証する.具体的には,マウスの行動実験や神経活動操作と計測,行動モデル化を用いる.脳の最適性が失われた場合,幻聴や妄想に繋がると考える.感覚情報と事前知識を統合する神経基盤の解明は,精神疾患の基礎的理解に繋がる. 初年度は,マウスのベイズ型行動課題を提案・実施した.ベイズ課題でマウスは,音刺激の周波数 (低・高) に応じて,左・右のスパウトを選択した.同課題は,事前知識の導入のために,左右スパウトの報酬量を約100試行で切り替えた (報酬量バイアス:3.8-1.0 ulから1.0-3.8 ul, 左-右).また,事前知識と感覚刺激のバランス操作のために,音提示時間を0.2秒・1.0秒用意した (音の不確実性操作).この行動課題時の選択行動を,10匹の野生型マウスで解析した. 音提示時刻が1.0秒の長音試行の場合,0.2秒の短音試行に比べて,マウスの周波数弁別行動は正確であり,報酬量バイアスの影響を受けにくかった.ただし,心理測定関数でのマウスの行動モデル化の結果,音の不確実性依存のマウスの選択行動は,最適ではないことがわかった.具体的には,マウスは,音の不確実性依存の行動バイアスを保持せず,一定のバイアスを保持していた.強化学習での行動モデル化は,音の不確実性に依存しない行動バイアスを,マウスが直前の経験から時々刻々と変更し,行動を修正する可能性を示唆した.これらの結果を国際的な学術雑誌のiScienceに発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの行動課題の構築に成功し,行動データ解析で,国際的な学術雑誌に成果を報告した.一方,行動課題時のマウスの神経活動計測や操作の実験は遅れている.特に神経活動操作の実験は,昨今の難しい状況により,アメリカからの遺伝子改変マウスの取得が遅れたため,セットアップが遅れた.進んだ面と遅れた面があるため,総合的には順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ベイズ型行動課題時に,マウスの大脳新皮質の神経活動を計測する.得られたデータを情報学的手法で解析し,脳のベイズ表現を解明する.また,レーザー走査型顕微鏡で,同行動課題時に,大脳新皮質背側の任意の領野を抑制する実験系を用いる.光遺伝学で,ベイズ型行動選択に寄与する領野や神経回路の同定につなげる.
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Research Products
(5 results)