2021 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of cell fate decision during mammalian spermatogenesis
Publicly Offered Research
Project Area | Ensuring integrity in gametogenesis |
Project/Area Number |
21H00233
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
前澤 創 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (90548174)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分化運命 / 精子形成 / エピジェネティクス / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳類精子形成期における分化運命決定機構の解明を目的とする。生殖細胞が分化し減数分裂期へ移行する際には、数千もの遺伝子発現が変化し、体細胞型の遺伝子発現プロファイルから精子形成期特有の遺伝子発現プロファイルへ切り替わる。申請者は、主に次世代シークエンス解析を利用して、遺伝子発現変化を制御する精子形成期特異的なエピゲノム形成機構やクロマチン構造変化を多数報告してきた。体細胞系列において、パイオニア転写因子や、クロマチン高次構造の再編成が細胞運命の決定に重要な役割を担っていることが示されつつあるが、生殖細胞分化においてはその分子機構が未解明である。 そこで本研究では、まずマウス精子形成期の代表的な分化段階の生殖細胞を分取し、雄性生殖細胞の分化進行に寄与する転写因子の同定を目指した。パイオニア転写因子は凝集したクロマチンを弛緩させる機能を有することから、各分化段階でオープンクロマチンに結合する因子を抽出した。本年度はオープンクロマチン結合性の因子の抽出に成功し、今後、質量分析で網羅的に同定する予定である。一方、シングルセルATAC-seq法を用いて精子形成の進行に重要な遺伝子発現を制御するクロマチン開閉状態を解析した。その結果、精子形成期における機能が未知の転写因子を複数同定した。また、代表的な分化段階の生殖細胞を用いて、クロマチン高次構造制御因子CTCFのクロマチン結合領域を同定したところ、減数分裂期の前後で結合領域が切り替わっていることが示された。さらに、体細胞型遺伝子発現の抑制に機能するSCML2の機能欠損マウスの精母細胞では、CTCF結合領域の変換に異常が生じていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、2021年度に精子形成期に機能するパイオニア因子の同定を終える予定であったが、未だ質量分析を実施するための十分量のオープンクロマチン結合タンパク質が得られていない。代替案としてシングルセルATAC-seq解析を実施し、シングルセルRNA-seqとの統合解析から、分化進行に機能する転写因子の同定を試みた。その結果、分化段階特異的に発現しクロマチン開閉状態を変化させる、複数のパイオニア因子の候補因子を同定した。一方、精子形成期の進行に伴う、CTCFのクロマチン結合機構の解析では、2021年度に予定していたChIP-seq解析を完了し、2022年度に予定していたScml2-KOマウスを用いたChIP-seq解析まで進めることができた。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、精子形成期の代表的な分化段階の生殖細胞を用いて、オープンクロマチン結合タンパク質を質量分析にて網羅的に同定する。一方で、シングルセルATAC-seq解析によって同定された候補因子の、分化進行への機能を調べるために、機能欠損マウスの作出、および細胞培養系を用いた分化誘導能の検証を実施する。さらに、CTCFのクロマチン結合変化の分子機構を明らかにするために、変化が生じるゲノム領域におけるエピジェネティックな変化やクロマチン開閉変化との関連性を検討する。
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