2021 Fiscal Year Annual Research Report
Real-time and real-space imaging of chromatin remodeling
Publicly Offered Research
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
21H00247
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 幹大 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (80631027)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 1分子イメージング・ナノ計測 / クロマチン動態 / 超分子複合体 / バイオイメージング / 1分子計測・操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命の根源ともいえる遺伝子発現には、クロマチンダイナミクスが重要であると考えられている。しかし、クロマチンを構成するヌクレオソームのナノ動態や、クロマチン制御因子群がヌクレオソーム上で起こす動的な構造変化をナノ空間、かつ、リアルタイムで直接可視化し解析した例はない。本研究は、高速原子間力顕微鏡(以下、高速AFM)を用い、ヌクレオソームのナノ動態を実時空間でイメージングし、ヌクレオソーム動態および、その関連タンパク質の分子作動機構を明らかにすることが目的である。 本年度は、これまでに行ってきた高速AFM観察の基板条件を再度見直し、ヌクレオソームの高速AFM観察におけるアーティファクトを最小限に抑え、真のヌクレオソームのナノ動態を可視化できる実験条件を見つけた。いくつかのDNAの長さを調整したヌクレオソームに対して高速AFM観察を行った結果、これまで多くのAFMを用いたDNAやヌクレオソームの研究で用いられてきたpoly-L-LysineやAPTES基板では、意図したヌクレオソーム構造が再現できていないことに気が付いた。そこで、同所属の高分子系の研究者との共同研究により、ピラーアレーンを高速AFM基板に適用することで、本来デザインしたヌクレオソーム構造を保ちつつ、そのナノ動態を可視化できることが分かった。その結果、H2AのヒストンバリアントであるH2A.ZがDNAに沿った自発的なスライディング現象を起こすことや、クロマチンリモデリング因子がATPの存在下でヌクレオソームを再配列する様子を捉えることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両サイドに正電荷をもったカチオン性C2ピラーアレーンがマイカ表面に2次元で展開することを発見し、ヌクレオソームのナノ動態観察において、高速AFM基板として有力であることを見出した。具体的には、全長193 bpで、その中心にヌクレオソーム構造をとりやすい601配列を持ったDNAを用い、Poly-L-Lysine (PLL)修飾基板上でヌクレオソーム構造を観察したが(この場合、ヒストンコアからは両端に23 bp(約7.8 nm)ずつDNAが観察されるべき)、予想に反し、両端とも約12 nm (35 bp)のDNAが観察された。これは、本来ヌクレオソームを構成するDNAがヒストンコアに巻き付かず、AFM基板側へ剥がれた構造をとってしまうことが分かった。そこで、正電荷をもつカチオン性C2ピラーアレーンを高速AFM基板に適用したところ、ヌクレオソームからはがれたDNAは観察されず、設計した通りの構造を頻度よく観察できるようになった。 上述した基板条件を用い、(1)領域内共同研究(胡桃坂計画班)として、H2AヒストンバリアントであるH2A.Zを含むヌクレオソームの高速AFM観察を行い、H2A.Zはヒストンコアが自発的にスライディングする様子を発見した。また、眞海計画班と胡桃坂計画班との領域内共同研究では、クロマチンリモデラー(HELLs-CDCA7 complex)に対し、高速AFM観察を行った。その結果、2つの固いドメインと、その間から延びるひも状ドメイン、さらに、そのひも状ドメインの先端に球状ドメインを持つことが分かった。この構造は、これまでに観察してきたSNF2Hでも見られ、クロマチンリモデラーの共通の立体構造であることを示唆した。以上の研究成果から、初年度は概ね順調に研究が進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度でヌクレオソームのナノ動態を観察するために最適化したピラーアレーン高速AFM基板を用い、以下に記述する3つの研究を行う。(1)ヒストン翻訳後修飾を受けたヌクレオソームのナノ動態観察。ヒストンテールの翻訳後修飾はクロマチンダイナミクスを変えるエピジェネティックなマーカーとして知られており、遺伝子発現制御に重要な役割を果たす。ピラーアレーン高速AFM基板を用いて、ヒストン翻訳後修飾を受けたヌクレオソームのナノ動態を観察し、その機能と構造との相関を見いだす。(2)ATP依存性クロマチンリモデリング複合体(HELLS-CDCA7)の高速AFM観察を行う。チューブ内で、あらかじめクロマチンリモデリング複合体とヌクレオソームを結合させ、ATP非存在下で高速AFM観察を開始する。クロマチンリモデリング複合体と結合したヌクレオソームを見つけ、コントロールのためしばらく高速AFM観察を続ける。その後、0.4 mM のATPを添加し、ヌクレオソームのリモデリングを開始させる。ヌクレオソームの大規模なリモデリングをリアルタイム観察すると共に、クロマチンリモデリング複合体のドメインの構造変化も詳細に観察する。(3)2種類のヒストンメチル化酵素(EHMT2, PRC2 complex)の高速AFM観察を行う。ピラーアレーン高速AFM基板を用い、ヌクレオソームと結合していない場合の酵素の構造とその動態を可視化する。その後、AFM基板に固定する前に、ヌクレオソームとヒストンメチル化酵素をあらかじめ反応させ、高速AFM観察を試みる。その際、ヒストンメチル化酵素の有無によるヌクレオソームの構造安定性や動態を詳細に観察する。最終年度は、これらの研究成果をまとめ、論文として発表する。
|
Research Products
(10 results)