2021 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンカーテン法によるクロマチン凝集の1分子蛍光顕微鏡観察
Publicly Offered Research
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
21H00252
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺川 剛 京都大学, 理学研究科, 助教 (20809652)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蛍光顕微鏡観察 / クロマチンカーテン / 染色体凝集 / コンデンシン / ヌクレオソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
コンデンシンは、有糸分裂期に分子モーターとして染色体ループを形成することで、染色体凝集を引き起こすタンパク質である。これまでの研究では、コンデンシンが染色体ループを形成する分子機構がわかっていなかった。特に、ヌクレオソームのような障害物がある環境で分子モーターとして機能できるかどうかはわかっていなかった。DNAカーテン法では長鎖DNAの両端をナノパターンに固定して、固定されたDNA上のタンパク質を一分子蛍光顕微鏡観察する。本年度の研究では、複数種のナノパターンを描画することで、DNAの両端の距離を可変にし、DNAにかかる張力を調節可能にした。また、本研究では精製したヒストンタンパク質を用いてヌクレオソームを再構成したDNAで実験を行った。それらのセットアップを用いたコンデンシンの一分子蛍光顕微鏡観察によって、DNAにかかる張力が小さいときには、コンデンシンが、速いモードと遅いモードの2種類のモードでDNA上を歩進することがわかった。また、ヌクレオソームなどのDNA上の障害物を乗り越えることができるのは速いモードだけであることがわかった。このことは、先行研究のクライオ電子顕微鏡観察で、ヌクレオチド結合時に2種類の構造変化が報告されていることとも一致する。これらの結果は、コンデンシンが裸のDNA上だけでなく染色体上で分子モーターとして機能できることを示している。この成果は、染色体ループ形成機構の解明に向けて大きな一歩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、電子線ナノ描画装置を用いて、ガラススライド上にナノパターンを描画した。DNAカーテン法では、このナノパターンにDNAの両端を固定して、固定したDNA上のタンパク質の動態を一分子観察する。本研究では、パターン間の距離が9、10、11、12、13ナノメートルになるようにデザインし、それぞれのナノパターンを描画することに成功した。このパターンにDNAを固定することにより、DNAにかかる張力を調節することができる。次に、それらのDNA上に量子ドットで染色したコンデンシンをロードし、そのDNA上におけるトランスロケーションを観察した。その結果、DNAにかかる張力が低い時には、遅いモードのトランスロケーションが観察された。一方で、DNAにかかる張力を高くすると、速いモードと遅いモードのトランスロケーションが観察された。次に、ナノパターンを描画したガラススライドに、精製したヒストンタンパク質で複数のヌクレオソームを再構成したDNAをロードし固定した。この時、1本のDNAに対して4~5個のヌクレオソームが形成されるようにヒストンタンパク質の濃度を調整した。このDNA上に量子ドットで染色したコンデンシンをロードし、DNA上におけるトランスロケーションを観察した。その結果、遅いモードのコンデンシンはヌクレオソームの地点でストールしたのに対し、速いモードのコンデンシンはヌクレオソームをバイパスした。ヌクレオソームを形成させたDNA上におけるコンデンシンのトランスロケーションを観察できた点は計画以上である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、コンデンシンがトランスロケーションする分子機構と、ヌクレオソームをバイパスする分子機構がわかっていない。一番大きな問題は、ヌクレオチド依存的なコンデンシンの構造変化がわかっていないことである。コンデンシンはATP加水分解に依存してDNA上をトランスロケーションする分子モーターである。したがって、ATP結合した構造、ADP結合した構造、ヌクレオチドを結合していない構造でそれぞれ異なる構造になると推定されているが、ヌクレオチドを結合していない構造以外の構造と、それらの間の構造変化はわかっていない。本年度の研究では、高速原子間力顕微鏡を用いて、ヌクレオチド依存的なコンデンシンの構造変化を明らかにする。具体的には、非加水分解ATPアナログ、ADPをそれぞれ過剰に添加したときのコンデンシンの構造を、高速原子間力顕微鏡で観察する。また、研究成果を広く発信するために、これまでの研究成果を論文にまとめ、国際査読付誌に投稿する。さらに、日米の生物物理学会で研究成果を報告する。
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Research Products
(9 results)