2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の目覚めを引き起こす遺伝子制御の基盤となるクロマチンの時間的変化
Publicly Offered Research
Project Area | Chromatin potential for gene regulation |
Project/Area Number |
21H00261
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 政充 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50447356)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クロマチン / ヒストン / ヌクレオソーム / 有性生殖 / 休眠 / 発芽 / 分裂酵母 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は常に増殖を繰り返すのではなく、周囲の環境に応じて休眠状態と活動状態を切り替えている。分裂酵母は有性生殖と無性生殖をおこなう真核生物であり、栄養源がない状況では有性生殖をおこない、その結果として生じた胞子は栄養源がない状況で休眠を続ける。栄養源が再び与えられると胞子は休眠を打破して発芽という細胞の目覚めの段階を経て、通常の増殖ステージに突入する。この目覚めの段階でどのような分子機構が働くのかは不明な点が多い。我々のこれまでの研究成果により、胞子の目覚めの時期にはヒストンH3遺伝子のひとつのmRNA量が低下して、その後発芽の後期段階になると再び上昇することが分かった。ヒストン発現の低下は、クロマチンの構造に影響を与えると想定し、本研究では胞子が目覚める時期にクロマチン構造がどのように変動するかを追究するための実験をおこなった。一つの方法は、クロマチンにおけるヌクレオソームのDNAへの結合態様を調べるATAC-seq解析を用いるものであり、本研究では、分裂酵母においても例が少なく、特に胞子細胞に対しては前例のないATAC-seq法を導入するための条件検討を実施した。胞子は特殊な細胞壁に覆われており、それを乗り越えてじゅうぶんなDNA消化反応をおこなうことが最大の関門となる。本研究では、胞子が脆弱化した変異体などを導入することで、制限酵素などのヌクレアーゼが細胞核内にアクセスできることを確認し、qPCRによる増幅DNAのクオリティ・コントロールをおこなった。その結果、じゅうぶんな制限断片およびPCR増幅断片を得られたため、今後じゅうぶんなクオリティでTn5によるATAC-seqが実施可能だと思われる実験プロトコルの作成に至った。その後、現在もATAC-seq法を実施して胞子および増殖細胞におけるクロマチン状態の違いについて解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の計画では、ATAC-seq法を分裂酵母の増殖細胞・休眠細胞(胞子)に適用するための実験条件の検討に主眼を置いて研究を開始した。その結果、予定通りにATAC-seq法の実験プロトコルを作成するに至った。今後も解析結果をみながら実験条件を見直し、別の手法での追試などにより、得られた結果の正当性について品質管理していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ATAC-seq実験の解析をおこなった結果について、まずはそのクオリティ・コントロールが必須である。解析がじゅうぶんなクオリティを保持していることを証明しながら、必要に応じて、ATAC-seqとは異なる手法でもクロマチン構造を解明していきたい。また、当初の予定通り、シングルセルレベルでの解析をおこなう準備を既に開始している。我々は既にシングルセルレベルでのRNA-seqを分裂酵母の胞子に世界初で導入して、そこからヒストンの重要性を見いだしている。そこで開発に用いた実験手法を本研究でも取り入れることで、シングルセルレベルでのクロマチン構造解析を実施することが可能だと想定し、研究を推進する予定である。
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