2021 Fiscal Year Annual Research Report
ケモテクノロジーを活用したプレエンプティヴ経路特異的Ubデコーダーの標的識別機構
Publicly Offered Research
Project Area | New frontier for ubiquitin biology driven by chemo-technologies |
Project/Area Number |
21H00289
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川原 裕之 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70291151)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Chemotechnology / Ubiquitin / UBA domain / Proteasome / Protein degradation / Preemptive / BAG6 / UBQLN |
Outline of Annual Research Achievements |
BAG6は、リボソームから小胞体へのポリペプチド配送を監視するプレエンプティヴ品質管理を差配している。BAG6は、新合成された膜タンパク質の中で、小胞体への組み込みに失敗した不良タンパク質を得意的に認識し、ユビキチン依存的分解系にリクルートする機能が知られている。我々は、BAG6には多くのユビキチンデコーダー(ユビキチン結合タンパク質)、並びにユビキチンリガーゼ群が会合していることを見出した。さらに、BAG6依存的タンパク質品質管理経路は、凝集性プリオンあるいは変異インスリン代謝の中核として機能することが、我々の最近の研究から判明しつつある。本研究期間中、BAG6が中核となるプレエンプティヴ品質管理を標的に、新しく低分子量Gタンパク質群を発見し、その基礎となる多くの研究成果を得ることができた。 例えば、BAG6はRab8ファミリー低分子量Gタンパク質をヌクレオチド依存的に認識し、GDP結合型のみをプロテアソームにリクルートする。その結果、Rab8ファミリー低分子量Gタンパク質のGDP結合型は極めて低い存在量に抑えられており、このバランスが崩れると小胞輸送に障害が発生する。一方、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質は、 BAG6によりユビキチンリガーゼとの相互作用がブロックされており、BAG6の機能欠損によりRhoファミリー低分子量Gタンパク質は分解系へのリクルートが亢進する。このように、BAG6は低分子量Gタンパク質の量的な調節に密接に関わりうることが研究により判明しつつある。当初、BAG6を中核としたプレエンプティヴ品質管理系は、不良膜タンパク質の分解に特化した存在と考えられていたが、その役割は遥かに広範であることが判明しつつある。このように我々の研究は当初の予想を超えた領域にまで進みつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BAG6はRab8ファミリー低分子量Gタンパク質をヌクレオチド依存的に認識し、GDP結合型のみをプロテアソームにリクルートする。その結果、Rab8ファミリー低分子量Gタンパク質のGDP結合型は極めて低い存在量に抑えられており、このバランスが崩れると小胞輸送に障害が発生することを新たに見出すことに成功した。一方、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質は、 BAG6によりユビキチンリガーゼとの相互作用がブロックされており、BAG6の機能欠損によりRhoファミリー低分子量Gタンパク質は分解系へのリクルートが亢進する。当初、BAG6を中核としたプレエンプティヴ品質管理系は、不良膜タンパク質の分解に特化した存在と考えられていたが、その役割は遥かに広範であることが判明しつつある。さらにBAG6複合体が、プリオン前駆体のユビキチン化に必須であることを見出してきた。このように、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となるプリオン疑集体、あるいは糖尿病発症の原因となりうるインシュリン疑集体などがプレエンプティヴ品質管理の重要な標的であることを見いだしつつあり、プレエンプティヴ品質管理の特異性決定に重大な役割を果たすユビキチン化システムの意義と機能分担を明らかにしつつある。 本研究の過程で、我々はBAG6複合体の基質認識ドメイン(を含むポりペプチド断片)が、プレエンプティヴ基質に特異的なプローブとなりうること、さらには拮抗阻害剤として機能しうることも見いだした(未発表)。この知見を応用して、細胞内不良タンパク質を検出・定量できる高感度プローブを開発すると同時に、従来のプロテアソーム阻害剤を超える選択性を有する新しいペプチド性阻害剤の開発にも挑んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度では、本申請で確立を目指すケモテクノロジーを、申請者の疾患モデルと組み合わせ、プレエンプティヴ品質管理各ステップの破綻がもたらす疾病発症の全く新しい原理解明に貢献する。さらに、プレエンプティヴ経路の機能を、その代表的な基質:プリオンならびにインスリンの生合成プロセスを評価系として徹底検討する。ケモテクノロジーを活用してBAG6複合体研究が発展すれば、プレエンプティヴ品質管理の破綻がもたらす疾病発症への全く新しい理解につながる。特に、Rabファミリー低分子量Gタンパク質、プリオンあるいはインシュリンなどのプレエンプティヴ品質管理異常に起因する神経変性疾患および遅発性1型糖尿病治療への全く新しいアカデミア創薬への途が切り拓かれることが充分に期待できる。現在、BAG6会合E3として同定したRING-fingerタンパク質などを標的に、これらの活性、ならびにBAG6との相互作用を阻害する特異的薬剤の同定進めつつある。このような薬剤を同定できたならば、これらの薬剤が、プレエンプティヴ品質管理の支配下にあるプリオン、あるいは遅発性1型糖尿病発症の原因となる疾患変異型インシュリンの凝集プロセスに与える影響を解明する。 さらに、BAG6複合体の基質認識ドメイン(を含むポりペプチド断片)が、プレエンプティヴ基質をアフィニティー精製するためのベイト(捕獲担体)としても 有効であることから、ケモユビキチン領域で進展著しい革新的MS解析と組み合わせて、BAG6複合体の新規標的、ならびに共同して働くユビキチンデコーダーを探索していくことを目指している。
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Research Products
(7 results)