2021 Fiscal Year Annual Research Report
失った過去を回復させる外部要因と脳内調節因子の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
21H00296
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
野村 洋 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (10549603)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
こころの時間の1つである「過去」は、脳内の記憶システムによって成立している。長い期間の経過やアルツハイマー病などの神経変性疾患によって過去は失われる。しかし過去が失われたように思われた後でも、多くの場合は脳内に記憶痕跡が残存している。そのため、“ふとした瞬間”に過去が回復することがある。しかし失われたように思えた過去がどのような要因によって回復するのか、過去が回復する神経メカニズムは不明である。そこで本研究は、過去を想起できるか否かを調節する要因を特定することを目的として行っている。 これまでに私たちの研究グループでは、ヒスタミン神経系を活性化させるヒスタミンH3受容体拮抗薬の投与によって記憶想起が回復することを明らかにしてきた。そこでヒスタミン神経の活性化が記憶想起を調節する可能性を考え、記憶想起時のヒスタミン神経の活動を測定した。in vivo Ca2+イメージングの一種であるファイバーフォトメトリー法によりヒスタミン神経の活動を測定した。ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)のプロモーター下流でCreリコンビナーゼを発現するHDC-Creマウスの結節乳頭核(ヒスタミン神経の起始核)に、「Cre依存的に蛍光Ca2+センサーGCaMPを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)」を注入し、ヒスタミン神経選択的にGCaMPを導入した。結節乳頭核に光ファイバーを挿入しGCaMPの蛍光を取得した。そして過去の連合記憶を想起させる外部刺激を与えたとき、ヒスタミン神経の活動が上昇する可能性が示唆された。その他、ヒスタミン神経の活動を操作する検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ヒスタミン神経の活動を測定する検討と活動を操作する検討を行った。そして、ファイバーフォトメトリーによる活動測定の実験から、記憶想起に伴ってヒスタミン神経の活動が上昇する可能性を提唱した。こうした成果は、ヒスタミン神経が記憶想起を調節する要因であることを示唆する結果であり、本研究の目的の達成に向けて確実に進展したことを示している。一連の結果を総合的に考えて、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きファイバーフォトメトリーによる神経活動の測定実験と、神経活動の操作実験を継続して行う。ファイバーフォトメトリー実験では、複数の記憶課題を用いた実験を行うことで、どのような記憶の想起に対してどのようにヒスタミン神経が活性化するかを明らかにする。 また、フォトメトリーによって活動の変化が見られた記憶課題で、活動が変化したタイミングについて、オプトジェネティクスをもちいてヒスタミン神経の活動を操作し、ヒスタミン神経の活動と記憶想起の関係を検証する。2つの実験を総合して、どのような記憶想起時にヒスタミン神経が活性化し、そのヒスタミン神経の活動上昇が記憶想起に寄与するのか因果関係まで明らかにする。
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