2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳の時間の単位の進化:哺乳類6種における無侵襲脳波記録による検討
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
21H00304
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30345516)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳 / 進化 / 脳波 / 聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳が外界を知覚する、まさにその機能が、脳の時間の最小単位を規定する。例えば聴覚では、数100ミリ秒の時間窓(時間幅)が単位となり、この時間窓内の刺激は、ひとつの聴覚イベントに統合されて聞こえる。この時間窓の長さには種差があっても、不思議ではない。そして、もし感覚野の知覚処理に時間窓の種差があるならば、感覚野から情報を受ける連合野や他の脳部位にも、それに応じた時間窓の種差があるはずである。つまり、外界情報の知覚を規定する境界条件としての時間窓は、いわば、脳の時間の単位や秒針のようなものと言える。そのため、知覚の時間窓が進化でどのように変化したか(あるいはしなかったか)は、脳の時間の種差を考える上で、極めて根本的な問題である。 しかし、知覚の時間窓に種差があるかもしれないという可能性そのものが、これまでほとんど検討されたことがない。そこで本研究は、ヒト、チンパンジー、マカクザル、マーモセットという霊長類4種に、霊長類以外の哺乳類であるイルカとウマの2種を加えた全6種を対象とした比較研究により、時間処理がとくに重要な聴覚に注目し、脳の知覚の時間窓の進化を明らかにすることを目的とした。脳活動の指標には、頭皮上から無侵襲で記録できる、聴覚誘発電位(AEP)を利用する。 本年度の研究では、霊長類4種の比較を先行して行い論文として発表した(Itoh et al., 2022)。また、ウマおよびイルカから脳波を記録する方法論の開発を進め、1分以内の短時間を断片的にであれば、脳波を記録できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画年度内に研究を完了できる見通しは保持している。
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Strategy for Future Research Activity |
ウマとイルカの脳波記録につき、1分以内の短時間を断片的にであれば、脳波を記録できるようになった。聴覚誘発電位の記録には、この記録時間を延ばしていく必要がある。これには、電極の形状や電極の装着法の改良、対象動物の慣れ、実験協力者(ウマやイルカの飼育者)の慣れ、などが必要である。これらの観点から、聴覚誘発電位記録の達成に向けて、引き続き、研究を推進していく。
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