2021 Fiscal Year Annual Research Report
長期記憶の時間生成を担う睡眠/覚醒サイクルにおける神経活動・シナプス動態
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
21H00305
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
宮本 大祐 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (50748697)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学習・記憶 / 睡眠・覚醒 / 神経活動 / シナプス可塑性 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は睡眠/覚醒サイクルにおけるシナプス可塑性を捉えて、記憶の脳表現の時間的変容の解明を目的としている。覚醒時の学習は脳の神経細胞を活性化して、興奮性シナプス伝達を担うグルタミン酸受容体であるAMPA受容体の量を増加させる。反対に、睡眠は記憶関連脳領域である大脳皮質や海馬のシナプスのAMPA受容体の量を平均的に減少させる。しかし、個々のシナプスにおける受容体数の変化は解明されてこなかった。本研究はAMPA受容体を蛍光可視化するために、SEP (Super Ecliptic pHluorin)-GluA1を用いた。SEPはpH依存的な緑色蛍光タンパク質であり、細胞外と細胞内のpHの違いを利用して、細胞膜上の機能的な受容体を選択的に蛍光可視化出来る。SEP-GluA1の発現を誘導するために、E14.5胚に子宮内電気穿孔法を適用した。その後、成体マウスにおいて、頭蓋骨にガラス窓を設置した。そして、二光子顕微鏡を用いて、一次運動皮質の2/3層錐体細胞が有する1層の樹状突起において、運動学習と睡眠を通じて経時イメージングを行った。 運動学習によってAMPA受容体量が特に増加した一部のスパイン(Maxスパイン)は、運動学習後の睡眠や断眠の影響を受けなかった。一方で、その他のスパインは運動学習後の睡眠時にAMPA受容体量が減少し、この減少は断眠によって阻害された。そして、運動学習後のAMPA受容体量の減少は、次の日における運動記憶成績と相関していた。これらより、運動学習後の睡眠は、大部分のシナプスをクールダウンさせて、運動記憶を担うシグナルを相対的に強化していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関して原著論文(Miyamoto et al., Nat Commun, 2021)および総説論文(Miyamoto, Neurosci Res, in press)を発表しているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
記憶痕跡細胞における目的遺伝子の発現制御 記憶痕跡細胞の活動を観察・操作するためにc-fos::tTAマウスを用いる。c-fosは神経細胞が活性化すると発現する最初期遺伝子の一種である。tTAはドキシサイクリン依存的に、遺伝子の発現を制御する。ドキシサイクリン投与の中断中に、マウスに学習課題を行わせて、活性化した神経細胞にtTAを発現させて下流の遺伝子発現を制御する。さらに、ttA依存的に目的遺伝子を発現させるために、アデノ随伴ウィルス (AAV)を使用する。AAVを自作するために、細胞培養の実験系を立ち上げている。
睡眠/覚醒サイクルにおける記憶痕跡細胞の活動観察 カルシウムインディケーターを用いて、記憶痕跡細胞の活動を観察する。既にファイバーフォトメトリー法や超小型内視顕微鏡を用いた神経活動観察を確立している。睡眠/覚醒状態を判定するために、電気生理学用のアンプを用いて脳波および筋電位も同時記録する。
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