2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on triggers for expressing autonomous motion of bio-robot
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Soft Robot: interdisciplinary integration of mechatronics, material science, and bio-computing |
Project/Area Number |
21H00332
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
古澤 和也 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00510017)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソフトロボット / バイオロボット / 脳オルガノイド / 再生筋組織 / 組織工学 / 自律運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、やわらかい制御装置とやわらかいアクチュエーターでできたソフトロボットが、自律運動を獲得するきっかけを解明することです。そのためには、自律運動の制御を担うやわらかい制御装置が必要となります。本研究では、やわらかい制御装置として、細胞培養でつくられるミニチュア脳(脳オルガノイド)を使用し、やわらかいアクチュエーターとして細胞培養でつくられる再生筋組織を使用します。私たちは、脳オルガノイドと再生筋組織を接着し同じ培養容器内で一緒に培養(共培養)することで、脳オルガノイドと再生筋組織との間に神経細胞を介した接続が形成されることを示してきました。しかし、単純にこの二つの再生組織を接続させただけでは、自律運動が発現しないことも同時にわかりました。 脳オルガノイドと再生筋組織を単純に接着させると、脳オルガノイドから再生筋組織へと神経細胞や軸索が自発的に伸長します。この時、神経細胞や軸策は再生筋組織全体に対してランダムに伸長していることが、免疫蛍光染色により明らかになりました。このようなランダムな接続では、脳オルガノイドによる再生筋組織の筋収縮運動を引き起こす情報伝達もランダムになってしまうため、組織全体が大きく収縮したり、ねじれたりするという大きな自律運動が生じないのだと考えました。そこで、脳オルガノイドと再生筋組織とを接続する神経細胞や軸索の通り道を制御することで特定の経路で二つの組織を接続する方法を確立するための技術開発に取り組みました。具体的には、再生筋組織に一定の張力を保たせつつ、脳オルガノイドと再生筋組織を結ぶ特定の経路をもつ培養骨格を3Dプリンターで印刷し、これを用いた共培養実験法を確立することができました。今後は、この培養法をで構築したソフトロボットの運動と神経活動の解析を進めることで、自律運動を獲得するきっかけの解明に取り組みます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究により、脳オルガノイドと再生筋組織とを特定の経路で接続する方法を確立することができた。また、3Dプリンターを使用して構築したソフトロボットの骨格に多管構造を持つコラーゲンゲルを組み合わせる方法も確立することができた。単に樹脂製の管(経路)ではなく、細胞外基質でできた管を組み合わせたことで、より効果的に脳オルガノイドから再生筋組織へと神経細胞や軸索を伸長させることが可能となると期待できる。また、3Dプリンターで印刷される骨格をデザインすることで、どのようなデザインの骨格が脳オルガノイドと再生筋組織とを接続するために有効かどうかを、系統的に調査することも可能になった。さらに、これまでの単純な再生組織の複合物ではなく、デザインされた骨格を組み合わせることによって、生きている再生組織を構成部品としてもつソフトロボットにデザインされた機構を導入することも可能になった。一方で、脳オルガノイドと再生筋組織との間の神経を介した接続や、自律運動の発現などについてはまだ確認できていない。培養環境やソフトロボットの骨格のデザインなどの条件検討をさらに進めることで、自律運動を行うソフトロボットを構築し、それが何をきっかけにして発現したのかを明らかにする必要がある。 令和3年度は、計画班清水グループとの連携研究も並行して進めることができた。清水グループに自発収縮運動を行う筋細胞ロボットを提供していただき、これに対して脳オルガノイドを単純に接着させることでバイオロボットを構築した。脳オルガノイドを接着させたことが、筋細胞ロボットの自発収縮運動に与える影響について調査し、グルタミン酸やクラーレを使用した薬理学的実験の結果から、脳オルガノイドとの共培養が筋細胞ロボットの伸長状態の保持(姿勢の維持)を引き起こすことを示唆する結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に確立した、3Dプリンターで印刷した骨格とこれまでに確立してきた脳オルガノイドと再生筋組織を共培養する技術を組み合わせて、デザインされた動作を自律的に行うソフトロボットを構築する。そのために、培養条件、骨格のデザイン、そして使用する筋芽細胞の種類などの条件検討を系統的に進める。この方法により、自律運動を行うソフトロボットが得られた場合には、どの条件が最も自律運動の発現に重要な効果をもたらしたのかを明らかにする。このことにより、生きた再生組織を部品として持つソフトロボットが自律運動を獲得するきっかけを解明する。具体的な方法は以下の通りである。 培養条件として、培養液の組成(添加する成長因子の濃度や血清の濃度等)および多管構造を持つコラーゲンゲル(MCCG)の組成を変えた実験を進める。培養液の組成は、神経線維の伸長を促す神経細胞成長因子や筋芽細胞の分化を誘導するインスリン様成長因子などを培養液に添加して制御する。また、MCCGの組成は、MCCGをラミニンやフィブロネクチンなどでコーティングすることにより制御する。それぞれの組成の変化が、構築したソフトロボットの組織形態や神経筋接合の形成に及ぼす影響を調べることで、二つの組織を最適に接続できる条件を決定する。 本研究では、脳オルガノイドと再生筋組織とを特定の経路で繋ぐための通り道を持つ培養骨格を3Dプリンターで印刷する。この時、脳オルガノイドと再生筋組織との間の距離や、通り道の直径、及び再生筋組織をくっつける場所の形状をデザインすることで、どのような形の骨格が二つの組織を機能的に接続することにつながるのかを明らかにする。 以上の二つの研究を並行して進めることで、ソフトロボットが自律運動を獲得するきっかけを解明する。
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Research Products
(8 results)