2021 Fiscal Year Annual Research Report
Multiple composition of the Japanese dog genome formed with the migration of humans to the Japanese archipelago
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
21H00341
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (30432016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 古代犬 / 縄文犬 / 弥生犬 / 古代DNA / 古代ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌは人類の移動に伴って世界中に広がったと考えられ、そのためイヌの移動の歴史は人類の移動の歴史を反映していると予想される。私たちの研究グループにより日本犬は遺伝的に独自性の高い犬種であることが明らかになった。日本犬のゲノムには、縄文人と一緒に日本列島へ渡来した縄文犬、渡来系弥生人と一緒に渡来した弥生犬が大きな影響を及ぼし、戦国時代以降に大陸から持ち込まれたその他犬種や、過去の交雑が明らかになったニホンオオカミのゲノムも小規模ではあるが日本犬ゲノムの構成に寄与していると考えられる。そのため現在の日本犬のゲノム構成は縄文犬、弥生犬のゲノムが主となり形成され、その構成には人類の日本列島への渡来の歴史が反映されていると予想できる。本研究では縄文時代、弥生時代に起きた人類の日本列島への渡来が、一緒に渡来したイヌを祖先とする日本犬のゲノム構成に影響を与えてきたかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、縄文時代前期(約6,000年前)の小竹貝塚(富山県)出土のイヌの骨3個体から決定したゲノム配列を解析した。その結果、縄文時代のイヌが世界で最も古いイヌの系統の1つであることが明らかになった。また愛媛県の上黒岩岩陰遺跡(7200-7400年前)から出土したイヌの歯からDNAを抽出し、配列の決定を行った。現在解析を行っている。また、須和田遺跡の奈良平安時代(8世紀)の層出土のイヌ5個体からDNAを抽出し、ゲノム解析を行なった。その結果、この時代のイヌにはすでに25%程度西ユーラシア系統のイヌのゲノムが含まれていることが明らかになった。さらに非破壊(最小破壊)のDNA抽出方法により鳥取県の青谷上寺地遺跡(弥生時代)出土のイヌの歯からDNA抽出を行った。このうち2個体からゲノム配列を決定し現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、縄文時代前期(約6,000年前)の小竹貝塚(富山県)出土のイヌの骨3個体から決定したゲノム配列を解析した。その結果、縄文時代のイヌが世界で最も古いイヌの系統の1つであることが明らかになった。小竹貝塚の縄文時代のイヌの特徴としてニホンオオカミのゲノムの保有率が高いことが挙げられる。これがこの遺跡だけの特徴なのか、それとも縄文犬全体の特徴なのかを明らかにするため、別地域の縄文犬の解析が必要である。そのため、愛媛県の上黒岩岩陰遺跡(7200-7400年前)から出土したイヌの歯からDNAを抽出し、配列の決定を行った。現在解析を行っている。また、須和田遺跡の奈良平安時代(8世紀)の層出土のイヌ5個体からDNAを抽出し、ゲノム解析を行なった。その結果、この時代のイヌにはすでに25%程度西ユーラシア系統のイヌのゲノムが含まれていることが明らかになった。これは、西ユーラシア系統のイヌのゲノムを半分程度持ったイヌが日本列島に渡来し、縄文時代のイヌと交雑したためだと予想している。この渡来したイヌは弥生時代のイヌの可能性が高い。そのため、非破壊(最小破壊)のDNA抽出方法により鳥取県の青谷上寺地遺跡(弥生時代)出土のイヌの歯からDNA抽出を行った。このうち2個体からゲノム配列を決定し現在解析中である。2021年度は予想以上に研究が進展している。その理由は、弥生時代のイヌのゲノムをすでに決定するところまで進めたことと、イヌでの非破壊DNA抽出法を可能にしたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022度は、現在配列解析を進めている縄文時代のイヌ1個体、奈良平安時代のイヌ5個体、江戸時代のイヌ1個体に加えて、配列決定を進めている縄文時代のイヌ1個体、弥生時代のイヌ2個体のゲノム解析を進め、人類の日本列島への渡来がどのように日本犬のゲノム構成に影響を与えてきたかを明らかにする予定である。また、さらに縄文時代の他の遺跡出土のイヌのDNA抽出とゲノム配列決定を行う予定である。どのような歯のDNAの残存状況がよいかがわかってきたので、弥生時代のイヌについても歯から非破壊法によりDNAを抽出しゲノム配列を決定することも行う。古代犬以外にも現生のイヌのゲノム配列の決定を行う。現在までのところ、現生の日本のイヌで最も西ユーラシア系統のイヌのゲノムが少ないのは四国犬である。そのため、四国犬のゲノムを複数個体決定することと、これまでに決定していないその他日本のイヌのゲノムを決定する予定である。
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Research Products
(12 results)