2021 Fiscal Year Annual Research Report
漆の過去・現在・未来
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
21H00348
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
菅 裕 県立広島大学, 生物資源科学部, 教授 (30734107)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウルシの起源 / ゲノム編集 / ゲノム / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
「漆の過去」九州大学の渡辺敦史博士らと共同研究を行い、弘前(青森)、明神(岩手)、吉田(岩手)、真室川(山形)、北杜(2か所;山梨)、真庭(岡山)の計7か所の植栽地の葉サンプルからゲノムDNA抽出を行い、GRAS-Di解析を行った。取得したデータをリファレンスゲノムにマッピングした結果、55-75%程度のマッピング率(MAPQ>10)を得た。集団構造解析を行った結果、地理的な遠近に関わらず、各植栽地のサンプルがそのままきれいに集団に分かれる傾向が明白であった。このことは、独自の品種によって構成されるウルシ林が、ヤポネシア各地で大切に守り育てられてきたことを示唆している。ただしデータ量は十分とは言えず、追加の解析が必要である。 「漆の現在」摂南大学の椎名隆博士、石崎陽子助手との共同研究で、ウルシの多型解析を行う上で基盤となるリファレンスゲノムの品質を向上させた。全ゲノムのIlluminaリシーケンスや、Oxford Nanoporeの一分子シーケンサーのデータを使用し、様々なアセンブリソフトウェアを検討して品質を向上させた。 「漆の未来」広島県立総合技術研究所と共同研究を行い、ウルシの優良品種「阿波」から不定胚および幼植物を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「漆の過去」日本の伝統的な塗料である漆を産出するウルシという植物が、中国起源なのかどうかを探る研究を行おうとした。コロナ禍で中国でのサンプリングはおろか日本国内のサンプリングも実質的に不可能な状況の中、国内サンプルを所有している研究者との共同研究という形で何とか国内の集団の解析を行うことができた。しかしながら中国集団の解析にはまったく手が付けられない状況となった。 「漆の現在」ウルシゲノムを完成させることができ、予定通り推移している。 「漆の未来」ウルシのゲノムを利用して将来的なゲノム編集につなげるため、未分化培養組織の作成を行った。作成自体は種子を利用することで成功したものの、その維持は想定したよりも難しく、長期間の維持はできなかった。また未分化組織から植物体の再生にも今のところ成功していない。 全体としては、プロジェクトの多くは予定通り実行状況であるものの、最も重要な研究課題である中国ウルシ集団の解析ができていないことから、やや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
「漆の過去」中国ウルシサンプルを過去に行った可能性のある研究者や博物館に連絡をとり、解析させてもらえないかどうか打診中である。ただしそれらのサンプルは15年以上前の古いものである可能性が高く、うまくDNA配列の解析ができるかどうかが成否の鍵を握る。 「漆の未来」未分化組織の長期の培養には成功していないが、短期間であれば培養可能であることから、これに対し遺伝子導入とゲノム編集を試みる。
|