2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative architectonics of hollow fruits and embryonic brains: intramural assembly of tensile and compression materials
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
21H00363
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 卓樹 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70311751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 器官形成 / ドーム / 力学的要因 / 張力 / 計測 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期マウスの脳原基が,頭頂部の表皮や皮下組織によるアゴ方向への締め付けのもと,それに抗しながら,内の液腔(脳室)に面して凹,外に向けて凸のドームの形の「脳胞」として成長する(壁を肥厚・拡張させる)発生現象を植物の中空果実と比較しつつ研究する本研究では,脳胞横断リングに切り目を入れた際に起きる「外向き開き・反り」現象が,ピーマン,トマトなどの中空果実壁の輪のカット時にも起きることにヒントを得て,「カットした際の開き」の力学的理由について,どんな細胞が,どんな形態・集簇性で,引張材あるいは圧縮材としての役割を果たしているか明らかにすることを目指している.壁の中に潜んでいたプレストレスを暴くことを可能とする外科的方法論を確立し,それを定量的な計測に結びつけ,最終的には有限要素解析を行って,発生期の脳原基の壁のありようについての理解を,建築の分野において一般的に行われているようなものに少しでも具体的に近づけたい.本研究の準備期間に着手し,本研究開始後に本領域の班会議等で得た情報や視点を盛り込んだ解析を加えた revision・追加実験等を行った力学的な研究の論文を発表した:(1)大脳の壁には一部、脳室に向けて凸な面がある。凹と凸で,力学的特性をAFM,レーザー焼灼により定量的に比較した.受動的な盛り上がりが凸をもたらすと示唆された(Nagasaka and Miyata, Front. Dev. Cell. Biol. 2021).(2)骨ができ始める前の胎生期の頭部において,頭皮の弾性・収縮性が拡張・壁肥厚を進める脳胞を押し付け(77-93 Pa),折り畳む・曲げると分かった(Tsujikawa et al., Dev. Dyn. 2022).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サイトビジット(2021年10月19日),分科会「機械的刺激と形態形成」(11月2日:東京学芸大:中空果実と「脳原基ドーム」発生の比較建築学),川口研究室とのzoom会議(11月30日「有限要素法で力学的に模したい胎生期マウス脳原基ドームの静と動」)を経て,究極的なゴールとしたい有限要素法による壁の力学的状況の再現・シミュレーションを念頭に,得るべき具体的数値として以下に取り組んできた.(1)脳室(脳原基壁の内面が対峙する液腔)の内圧:自作のマノメータ(ピペットマンをガラスキャピラリーとつなぎ,間につけた水柱で圧を測定)によって測定し,頭皮の収縮力を薬剤(アクトミオシン阻害剤)で弱めると脳室圧が下がると見出した.脳室内圧に貢献し得る候補要素として,脳体積,脳脊髄液産生,脳膜による締め付けも考え得るので,脳体積を加減する遺伝子操作,脳脊髄液産生を鈍らせるとされる薬剤の投与,脳膜の除去を組み合わせている.(2)壁が曲がる際のちから:プラーで作成したガラス針のバネ定数を、電子秤を用いて求めた。その針で「脳原基の壁が曲がってくる」のを受けとめ、針の曲がり度観察から「曲がりの力」を求める系を構築中。バネ定数・硬度の異なる多種類のキャリラリーを準備できており,曲がる壁の受け止めをうまく(ズレやつかえなどのないように)」できる条件を検討している.時折,良い会合状況が得られており,今後,改善が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
脳胞横断リングに切り目を入れた際に起きる「外向き開き・反り」現象が、ピーマン、トマトなどの中空果実壁の輪のカット時にも起きることにヒントを得て,「カットした際の開き」の力学的理由について,どんな細胞が,どんな形態・集簇性で,引張材あるいは圧縮材としての役割を果たしているか明らかにする.壁の中に潜んでいたプレストレスを暴くことを可能とする外科的方法論を確立し、それを定量的な計測に結びつけ、最終的には有限要素解析を行って、発生期の脳原基の壁のありようについての理解を、建築の分野において一般的に行われているようなものに少しでも具体的に近づけたい.壁の外表面近くにニューロン(神経細胞)から発された長い軸索 が走行していることに注目し、これがピーマンのクチクラのような引張材・張力材としての役割を果たすか、ニューロン軸索走行路に対する外科的テスト、ニューロン・軸索を人為的に減じる実験で明らかにする。(圧縮材は、主に2年目に解析する) そして「リング内にあった残留応力」の「外部圧に対する脳胞ドームの抵抗性」への貢献を調べるために、「軸索形成ニューロンを減じる」実験によってドーム形状の安定性、外力に対する抵抗性が低下するかどうか、吸引試験・遠心試験により解析する。
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Research Products
(7 results)