2021 Fiscal Year Annual Research Report
重合した光異性化分子の集積構造形態変化を用いた発動分子システム
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
21H00396
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東口 顕士 京都大学, 工学研究科, 講師 (90376583)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超分子構造体 / 光反応 / ジアリールエテン / 重合 / 枯渇力 |
Outline of Annual Research Achievements |
両親媒性ジアリールエテンからなる超分子構造体が示す光可逆相転移について検討した。準安定・最安定相を示す系の物理化学、枯渇力による超分子構造体を大きくすることについて論文発表した。加えて重合した超分子構造体の変形挙動を評価した。 親水鎖、疎水鎖共に二本ずつ有する両親媒性ジアリールエテンは、徐冷することでファイバー状の準安定相を形成し、急冷するとシート状の最安定相を形成した。一般に知られている急冷で準安定相を凍結させる方法とは逆の挙動であり、親水鎖であるトリ(エチレングリコール)鎖のLCST転移に伴うエントロピー変化の寄与が両相のポテンシャルエネルギーの大小関係を変化させるためと推測された。 枯渇力によるコロイド粒子の凝集はよく知られた現象である。ファイバー状の光応答性超分子構造体はバンドルを形成し光照射で収縮および伸長を起こす、すなわちナノメートルサイズでの変形挙動を異方性を残したままマイクロメートルサイズに相似拡大できることを過去に報告した。球状に丸まったひだ状シート型の超分子構造体に枯渇力を作用させたところ、辺長数百マイクロメートルのシートが多数形成された。TEMによる局所的観察ではひだ状シートが押しつぶされたような構造が認められたが、全体としては積層シート構造が形成されたと推測された。 重合した超分子構造体の変形挙動を評価した。疎水鎖末端にビニル基を有する両親媒性ジアリールエテンを合成、重合させた。一官能性ビニルモノマー型のみからなるポリマーで形成させた超分子構造体は、紫外光照射によって表面から消失していき、最終的には光学顕微鏡で視認できなくなった。TEM観察により光照射前はコアセルベート相、照射後はミセルになっていた。そこで二官能性ビニルモノマーを混合して架橋させたポリマーからなる超分子構造体について変形挙動を評価したところ、紫外光照射により粒径が可逆変化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期間内に論文発表を2件行った。また年度内に行う予定であった、重合した超分子構造体についても、当初期待通りに架橋による可逆形態変化の安定化を実現できた。水中で先に超分子構造体にしてから架橋重合させる方法について申請書内では記載しており、それについてはジアリールエテン部位の光分解反応によってうまく行かなかったが、手段に依らず目的は達成されているため、全体としては予定通りに研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績で示した準安定相と重合を組み合わせることで、より複雑に運動する系の構築を目指す。準安定相を形成する両親媒性ジアリールエテンは疎水鎖二本型であり、ビニル基を一置換および二置換することで架橋構造を形成することが可能となる。また準安定相はJ会合、最安定相はH会合に由来するものであり、任意の照射波長に対する吸光係数は異なる。目標としては、まず第一に準安定ファイバーを重合することで最安定シートへの常温暗所での相転移を阻害することである。続いて二番目として、これまで変形に利用してきた紫外光と可視光の切り替えではなく、定常光すなわち波長も強度も変えず、相転移に基づく吸光係数の違いによって相状態の相互変換およびそれに伴う繰り返し形態変化を導く。
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Research Products
(3 results)