2021 Fiscal Year Annual Research Report
Actuation of Smart Gel Directionally Crawling on an Electrode Surface by Biomimetic Mechanisms
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Engine: Design of Autonomous Functions through Energy Conversion |
Project/Area Number |
21H00407
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
相樂 隆正 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20192594)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / スマートゲル / 電気化学発動系 / 酸化還元 / ビオロゲン / 急速収縮伸長 / 這動 / 静電相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
・ビオロゲンをペンダントしたポリ-L-リジンをグルタルアルデヒドで架橋して得たハイドロゲル(PLLV-GA-gel)の、合成法に依存した還元収縮(ジチオナイトによる)と再酸化膨張(水中の酸素による)の速度を、複数の2点間セットでの距離の時間変化をビデオ画像から読み取り、最適化計算から求める方法を可能にした。これにより、大きな分子量のPLLを用いる効果、グラフェン等の導電性フィラーを導入する効果を定量的に評価できた。具体的には、PLLの分子量を12000から300000に増大すると、飽和収縮率は小さく、初動の収縮速度は速くなった。 ・PLLV-GA-gelに導入するための銀ナノワイヤ(Ag-NW)の合成に、塩化物イオンを共存させてAgClを核とする方法で狙い通りに成功し、実際にgelに導入して電気化学特性と還元収縮特性を明らかにした。その結果、電極からの電子移動が、電極表面から相当の距離まで広域化かつ遠距離化していることを示唆するデータを得た。 ・裸のAu(111)電極表面上で、ハイドロゲルを電位駆動により這動する「足」の機構を構築するため、Au(111)電極に対して、スルホネート基をもつ小分子~ポリマーの吸脱着特性を電位の関数として明らかにした。ポリマー化することによる緩慢化、界面活性を導入することによる多段階化などが明らかになった。具体的には、パラトルエンスルホネートが、ゼロ表面電荷電位(pzc)よりpositiveな電位で急速な吸着を始める電位があるのに対し、アルキル鎖を持つと、pzcよりややnegativeな電位から、緩慢な2段階の吸着を起こすことがわかった。 ・上記の「足」の第2の方法のため、酸化還元活性有機膜で修飾した電極とポリアニオンとの相互作用を精査した。その結果、高分子表面のアニオンサイトが対アニオンとして機能することが実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイドロゲルを電極上で這動させるための「足」として、電極表面電荷や表面修飾有機膜との静電相互作用変化を用いる方法の基礎的検討が進捗した。同時に、変化の速さなどの制御性については課題も見えてきた。一方で、這動運動の実現に向けて必要な、圧縮力または剥離力を掛けた状態での電極表面-ゲル界面の電気化学測定は、試行錯誤が多く、難渋した。 Au-NWの代わりにAg-NWを安定に組み込むことができたこと、修飾Au電極表面とアニオン電解質ポリマーゲル表面との間の静電相互作用の様相が理解できるようになってきたことなど、当初の期待や予見を超える進展もあった。Au-NWをゲル内で還元生成してネットワーク構造と構築するという計画段階のプランの問題点をいち早く把握し、Ag-NWの優位性を考察して切り替え、ゲルがAg-NWで破損することなく伸縮能を保つことも確認できた成果は重要である。また、「足」となる部分でのフェロセンの酸化に伴って結合するアニオンとして、表面を被覆するアニオン性高分子膜の表面イオンサイトと、膜を透過してきたアニオンとが競争する過程の存在を、詳細な電気化学測定から把握することができた。 これらを総合し、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・還元後の再酸化膨張を格段に高速化する必要がある。ゲル全体を這動させるに十分なエンジンとして働かせるためである。そのため、Ag-NWの構造と性質、ゲル内での配置を理想化する。 ・基板上で自律的に自立並進運動できる高分子ゲルを、PLLV-GA-gelゲルを基体として構築することに本格着手する。ハイドロゲル内で、電子ホッピングやポリマー鎖の二次構造変化をナノレベルで起こし、活性中心の集積や浸透圧差による脱水を誘導する。動きを創発的に相乗し、アメーバや生物最速の収縮を起こすスパズモネームを手本とした機序の運動を達成する。アメーバの仮足運動を模倣するための2種類の足が必要であり、ゲル酸化膨潤時に強付着する足を、配位子末端を用いる方法と、静電引力による方法のどちらか一方に絞り込み、実現させる。また、還元収縮時に強付着するものも不可欠であり、研究開始時にプランニングした複数の方法をテストして絞り込む。 ・上記の検討においては、接触界面における界面張力の大幅な変化を誘導することが不可欠であり、ゲル表面および基板表面の設計とともに、巨視的付着力を実測することが鍵となる。この実測は、特型電気化学セルと、表面張力計の改造によって構築する機構の組み合わせで実現させる。このようなin situな付着力測定は前例がなく、新しい挑戦である。 ・伸縮運動の次元性を規定する。線の伸縮か、面の拡張収縮か、バルクの全方位膨張収縮かを明確に区別した制御を可能にする。また、一軸配向性ある運動を生む手法を開発する。 ・その他、ポリマー鎖の一軸配向による伸縮方向と電子移動方向とを直交化させる、ポリ乳酸ファイバーとの混合ゲル化により糸状複合ハイドロゲルを合成して「線」の収縮を達成する、ハイドロゲル内に脂質二分子膜を一軸配向で形成させ、二分子膜面方向のみ電子移動させる複合ゲル化で「面」の収縮を達成する、などの検討を推進する。
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Remarks |
アウトリーチ: 長崎大学によるクラスラボ2020にて、「なぜ水滴やしゃぼん玉は丸いのか? 表面張力による力を感じよう。」と題する模擬実験付き講義と研究紹介を対面で行った。
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