2021 Fiscal Year Annual Research Report
シンギュラリティ細胞の脱分化による組織維持・再生機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
21H00415
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中西 未央 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (70534353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞の可塑性 / 多細胞 / 組織再生 / 幹細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、研究代表者が申請時までに多能性幹細胞社会で確立したモデルを組織幹前駆細胞へと敷衍し、脱分化能をもったシンギュラリティ細胞が組織維持・再生を制御するかを明らかにし、その未知の制御メカニズムを解明することである。 初年度(2021年度)はまず「脱分化能をもったシンギュラリティ組織前駆細胞が存在するか?」について、各幹前駆細胞が詳細にcharacterizeされているマウス造血系をモデルとして解明を試みた。まず他の骨髄ニッチからの影響を除き、造血幹前駆細胞間の相互作用に焦点を絞って解析するために、ex vivo培養系をもちいて各種造血前駆細胞の自発的な分化状態変化を調べた。その結果、特定の造血前駆細胞の一部が培養系において幹細胞様の表面抗原パターンと遺伝子発現を獲得することが明らかになった。このような変化は前駆細胞を幹細胞と共培養することにより抑制される傾向が見られたことから、造血幹細胞由来のシグナルが造血前駆細胞の脱分化を制御していることが示唆された。1細胞トランスクリプトーム解析によってこのシグナル候補の予測をおこなった結果、細胞同士の接触(cell-cell interaction)を介したシグナルが多数同定された。そこでマウス骨髄組織切片の多重免疫染色・共焦点顕微鏡による解析をおこなった結果、一部のマウス造血幹前駆細胞が互いに密接したクラスター構造を形成していることを発見した。これらの結果は、研究課題申請時は想定していなかった造血幹前駆細胞の未知の空間的相互制御が、シンギュラリティ前駆細胞の脱分化をつかさどっている可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の目標である「脱分化能をもったシンギュラリティ細胞の同定」をまずex vivoにおいて果たしただけでなく、骨髄における造血細胞の空間的相互制御という、造血制御の新たな仕組みを明らかにしつつある。その研究成果は一部が関連する複数の学会で紹介されて高い関心を集めた。さらに本研究課題で明らかにしつつある脱分化を介した新たな組織幹前駆細胞の理解は、組織の再生・老化研究に革新をもたらすものとして極めて高い発展性がみとめられる。実際に本研究課題で得られた知見を組織再生・抗老化医療へと結びつける発展的研究提案は、長期型研究費を含む複数の競争的研究資金を獲得した。また申請時に未発表であった多能性幹細胞の系で得られた結果を含む論文が発表された。 以上のように研究実施計画を大きく超えた進捗を達成できたことから、当初計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2022年度)は作製中の薬剤誘導型レポーターノックインマウスを利用して、生体内における造血前駆細胞脱分化を検証する。特に骨髄障害を与えた場合に脱分化が促進・幹細胞再生を促す可能性を検証する。次に初年度にトランスクリプトームデータ解析から予想された造血幹細胞に由来する脱分化制御候補シグナルについて、ex vivo培養系を応用したミニスクリーニングによる同定をおこなう。さらにこのスクリーニングの結果をもとに、生体内におけるシンギュラリティ細胞制御メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(3 results)