2021 Fiscal Year Annual Research Report
“パイオニア”動物でひもとく海から淡水、陸上への進出をもたらしたシンギュラリティ
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
21H00428
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 竜哉 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (10294480)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際研究グループで、新しい水・塩分環境への進出をもたらしたシンギュラリティとして提唱する抗利尿ホルモン(バソプレシン)系―腎臓の原型を、原始左右相称動物の扁形動物ヒラムシ(海産プラナリアの仲間)を用いて解明している。 まず、脊椎動物の水・塩分環境適応の“要”でもある「バソプレシン/オキシトシン」の同族ペプチドをヒラムシから発見した。この神経ペプチドは、脊椎動物と無脊椎動物において広く存在することから、左右相称動物に普遍的な神経ペプチドとして、その共通祖先においてすでに存在していたと考えられるが、その進化起源は明らかになってなかった。今回、左右相称動物の共通祖先に近いとされるシンプルな体制を持つ、原始左右相称動物である扁形動物門(Platyhelminthes)から、その同族ペプチドを特定することに成功し、この祖先型ホルモンをプラチトシン(platytocin)系と名付けた。このホルモンは脳神経節の2対のニューロンのみで産生され、脱水で誘導された。このたった4個の細胞こそ、シンギュラリティ細胞かもしれない。さらに、プラチトシン系は扁形動物でも哺乳類と同様に抗利尿ホルモンとして機能していることを見出した。従って、『抗利尿ホルモン系による“腎臓” i.e., 体液の調節』の起源が、新しい水・塩分環境への進出をはじめた扁形動物まで遡れる。すなわち新しい水・塩分環境への進出をもたらしたシンギュラリティの可能性がある。また、これまで不明であった神経シナプス系からの内分泌系/液性調節の誕生:神経内分泌の進化起源(シンギュラリティ)の解明も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果が、 領域会議で受賞、「Science Advances」等に掲載されたため。 これらを基に、 「Zool Sci Award」も授与され、 Scientific Reports の 関連特集の Editor にも選出されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
環境進出シンギュラリティと提唱したプラチトシン系→原腎管の ・細胞・分子基盤の解析;1細胞RNAseq。 ・個体レベルの機能解析;プラチトシンなど基盤分子の人為的操作→原腎管の水輸送への影響をAMATERAS観察。
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