2021 Fiscal Year Annual Research Report
神経精神疾患発症における免疫応答によるシンギュラリティの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
21H00432
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 美菜子 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70793115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病などの神経変性疾患はAmyloid beta(Aβ)やリン酸化Tauによる凝集体をもつシンギュラリティ細胞が出現し、何らかの刺激によりシンギュラリティ細胞が拡大していくシンギュラリティ現象である。自閉スペクトラム症・統合失調症などの精神疾患においても同様の現象が起こっていることが想定される。多発性硬化症や抗NMDA受容体抗体脳炎などはもちろんのこと、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患に加え、自閉スペクトラム症・統合失調症などの精神疾患にも獲得免疫系のT細胞・B細胞といった多種多様な免疫細胞が関与していることが明らかになってきた。しかし、現象の「相関」は明らかになっても具体的な分子レベルでの理解は極めて遅れている。 我々はこれまでにマウス脳梗塞モデルを用いて脳損傷後の炎症によって梗塞や神経症状が増悪化することを見出し報告してきた。発症後急性期にはマクロファージやγδT細胞を中心とした自然免疫関連炎症が脳内炎症の主役であることを見出した。また慢性期には多量のT細胞が浸潤しており極めて特殊な様相を示すことを見出した。特にTregが脳特異的な性質を獲得することでミクログリアやアストロサイトの過剰な活性化を制御して神経症状の回復に寄与することを明らかにしている。アルツハイマー病モデルや統合失調症モデルマウスの脳内でT細胞浸潤が亢進していることを明らかにしており、免疫応答と神経疾患発症との関与が示唆される。また、炎症性腸疾患を起こすとアルツハイマーの病態が亢進することも見出した。ヒトでも炎症性腸疾患が認知症のリスクとなることが報告されたがメカニズムは不明である。そこで、本研究では、神経変性疾患・精神疾患の発症のカギとなるシンギュラリティ細胞の拡大を制御する免疫応答を明らかにすることで新規治療法を開発することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルツハイマー病の病態への腸管炎症の影響を調べるために、APPNL-G-Fマウスに急性腸炎・慢性腸炎・食物アレルギーによる腸炎を誘導し、脳内における免疫細胞の変化や凝集型アミロイドベータ(Aβ)タンパク質の解析を行った。その結果、急性腸炎を誘導したAPPNL-G-Fマウスの脳内において、好中球の浸潤や凝集型Aβの増加が認められた。以上より急性腸炎が起きることで好中球がアルツハイマー病マウスの脳に浸潤し、病態の進行に大きく関連していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内や脳の周辺部への好中球の増加とアミロイドベータ(Aβ)蓄積の関連を調べる。抗体による好中球の除去を行うことによって、Aβの蓄積に影響が出るかどうかを解析する。好中球由来のプロテアーゼによるAβの異常な切断や、NetosisによるAβの排出異常など、Aβ増加メカニズムを追求する。
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Research Products
(9 results)