2021 Fiscal Year Annual Research Report
腎ネフロン形成現象を司るリーダー細胞の同定と特異性の理解
Publicly Offered Research
Project Area | Singularity biology |
Project/Area Number |
21H00444
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高里 実 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40788676)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腎臓オルガノイド / ネフロン前駆細胞 / MET / リーダー細胞 / シンギュラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、カノニカルWntシグナルの直接の下流であるWNT4遺伝子の遺伝子座に赤色蛍光タンパク質をノックインしたWNT4-tdTomatoレポーターヒトiPS細胞株をCRISPER/Cas9システムを用いて樹立した。さらに、通常のMETイベント再現プロトコールを改変し、ガラスボトムプレート上でゲルの中にレポーターiPS細胞株から作製したスフェロイドを包埋することで、ライブイメージングに適した条件下で腎臓オルガノイドを作成できるようになった。そして、腎胞を持つスフェロイドと持たないスフェロイドが培養13日目においておよそ1:1の割合で混在するような条件を設定した。上記の手法により、細胞塊を最小化し、METが起きるスフェロイドと起きないスフェロイドが混在するとともに、それらのスフェロイドをライブイメージングに適した条件下で培養することが可能になった。そして実際にライブイメージングを行った結果、稀な確率でtdTomatoを発現する細胞が認められ、しかもその後の追跡により、その細胞が起点となり腎胞を形成する事が分かった。すなわち、METシンギュラリティイベントの発生要因となるリーダー 細胞の資質は、カノニカルWntシグナルが誘導された時点で既に生じているものと推察された。また上記のライブイメージングを続けていく中で、面白いことに、細胞塊のサイズが大きければ大きいほど、METイベントがより早期に起こることも分かった。サイズの異なる細胞塊では、細胞ないしは細胞環境に違いがあり、METイベントの起こる時期が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りMETイベントのライブイメージングを行い、METイベントとWNT4-tdTomatoの発現の対応を確認できた。また、その結果、機械学習を行うべきタイミングを、カノニカルWntシグナルを与える直前、直後と判定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
記録した画像を元に機械学習を行い、tdTomatoタンパクを将 来発現すると予測される極小細胞塊をprospectiveに同定するアルゴリズム(tdTomato蛍光を発するより前に、光学的情報のみで予定細胞塊を推定する手法)を確立する。そのような「予定MET細胞塊」と、「非予定MET細胞塊」の二群をそれぞれ、細胞ピッキング装置を使って大量に採取する。両者のトランスクリプトームを比較解析し、MET イベントの特異性を担う因子を同定する。まずは、二群間の遺伝子発現比較をbulk RNA-seqにより行い、リーダー細胞を含む細胞塊に特徴的に発現する遺伝子群を検出する。しかし、bulk RNA-seqのデータは予定MET細胞塊に含まれる全ての細胞の遺伝子発現情報の平均値を示すので、リーダー細胞に特異性があるのか、それともリーダー細胞を生み出す細胞環境に特異性があるのかを見分けることが出来ない。そこで、次に、予定及び非予定MET細胞塊を乖離し、1 細胞RNA-seqを実施する。これにより、予定MET細胞塊 内部のリーダー細胞(もしくはその周辺細胞)の特異性をより詳細に明らかにする。
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